Technics café KYOTO

Playlist

2024/8/1~2024/9/30グランドテーマ:MIX
(音楽カルチャー、音楽ジャンル、
アーティストなどを有機的にMIX)

大塚 広子(DJ、ライター、プロデューサー)

Profile

新聞や音楽専門誌、ライナーノーツなどに執筆。日本のジャズレーベル、トリオ・レコーズ、ブルーノート姉妹レーベルのサムシン・エルス、フランスのサラヴァなどのレーベル公式コンピレーション/ミックスCDなど、編集盤の選曲も多数。DJ経歴約25年。全国各地、スペインやニューヨークでのゲスト出演、2度のフジロックフェスティバル、東京JAZZに出演。渋谷のマンスリーレコードセッション「CHAMP」では20年以上レジデントDJを務めている。自身のレーベル、「Key of Life+」を主催し、作品監修やプロデュース活動を行う他、企業の音楽プロデュース/ブッキングや、ジャズ及びアナログレコード普及におけるオピニオンリーダーとして各メディアで活躍。ラジオ番組では、音楽史における女性をテーマにした企画番組を手がけ、同テーマでの研究執筆活動も行なっている。二児の母。

Morning Time Playlist
  • Dinah Washington
    Dinah Jams
    「ダイナが歌う曲は全てダイナのものになる」このアルバムを聴いて、そんな表現に大きく頷いた。スキャットをしないダイナは、他のジャズ歌手とは一線を画していて、この作品でもブルースやゴスペル色の強い大胆な即興で、クリフォード・ブラウン (tp)、マックス・ローチ(ds) らジャズ名手たちの強靭な演奏の上を堂々と渡り歩く。1954年ロサンゼルスでのライブ演奏。
  • Gretchen Parlato
    Flor
    2021年リリース。シンガーソングライターのグレッチェン・パーラトが、2人の子供たちを育てる中で感じたことや得たことを自分の尺度で形にした大傑作。デビッド・ボウイの生前最後の作品「NO PLAN」のカヴァーでは、「今の状況を受け入れ、そこに身を任すこと」を歌う。彼女が示唆する、許す、受け入れる、というメッセージは、今も私の学びにつながっている。
Day Time Playlist
  • Flora Purim
    If You Will
    80歳になったばかりのフローラ・プリムが、15年ぶりにリリースした2022年作。2000年にジョージ・デュークと共作した「If You Will」のカヴァーでみせる高揚感、そしてポジティブさにまず驚く。彼女特有のハイブリッドな精神で、娘夫婦や夫のアイアート、仲間のミュージシャンたちの個性を見事にブレンドさせている。多彩なキャリアの中から選ばれた楽曲と、娘ダイアナ作曲の新曲など、聴きどころ満載。
  • Egberto Gismonti
    Sol Do Meio Dia
    土着的なのに凛とした佇まいが魅力の、ECMレーベル1977年作。「Noonday Sun」という英訳の本作は、インディオとともに生活し、先住民の音楽を研究したジスモンチの思いが結実している。20世紀最高峰の教育者、ナディア・ブーランジェのもとで学んだ近代西洋音楽の影響も、組曲構成の 「Café」や、ナナ・ヴァスコンセロスのビリンバウに多重録音コーラスを交えた「Kalimba / Lua Cheia」に表れている。
  • Dave Pike
    Peligroso
    ビル・エヴァンスとの共作でも知られるジャズ・ビブラフォン、マリンバ奏者、デイヴ・パイク。2015年に亡くなり、遺作となった00年録音の本作は、久しぶりのラテンジャズ・プロジェクト。カル・ジェイダーとミルト・ジャクソンに捧げられたオリジナル曲を中心に、ウェイン・ショーターの「Beaty And Beast 」のカヴァーも収録。パイクの唸り声も混じり合う、陽気でスウィング感に溢れた昼の音楽。
  • Fuse One
    Silk
    一人一人がリーダー作を持つ豪華メンバーを集めたユニット、フューズ・ワンの81年リリースの2作目。レオン・ンドゥグ・チャンクラーのアレンジと、エリック・ゲイルの参加に注目。高速のフュージョン・ジャズダンサー、B2「Sunwalk」 もキャッチーだが、テーマの陰に隠れた、ベースとドラム/パーカッションのグルーヴが畳み掛ける、B1「Hot Fire」が◎。夕暮れに向けての時間に楽しみたい。
  • Azymuth
    Rapid Transit
    昼の最終部には、ジャケットの夕暮れが似合う本作を。アジムス のMilestoneレーベルからの5作目で、都会的なサウンドに磨きがかかった83年作。B2「I'm Just Looking Around」は、フルートと脱力感のある男声スキャットが清涼感を掻き立てるナンバー。穏やかに楽器やボイスが掛け合うなか、イヴァン・コンチの間を生かしたドラミングが最高に冴え渡っている。時代を感じさせない永遠のサウダージ。
Night Time Playlist
  • Mary Lou Williams
    Mary Lou Williams
    ピアニスト、作曲家のメアリー・ルー・ウィリアムスは、ジャズシーンでの功績が近年どんどん証明されている。本作は、自身の立ち上げたメアリーレコードからの1964年作。メアリーの功績の1つとも言える女性インディペンテントレーベルの先駆けとして重要なアルバムだ。ゴスペル・クワイアーとの荘厳な曲や、ワルツの静寂なリズムで綴られた「It Ain't Necessarily So」 など、内に込められた孤高の強さに心を掴まれる。
  • Abdullah Ibrahim
    The Balance
    もうすぐ90歳を迎える南アフリカ人のピアニスト、作曲家、アブドゥーラ・イブラヒム。今現在も精力的にヨーロッパをまわっている。2019年ロンドン録音の本作は、オジリナル曲メインの構成で、ソロピアノの即興とセプテットチーム「Ekaya」をフィーチャーした重厚な楽曲も同時に楽しめる。「新しいものもあれば再現したものもある、多数の作品から成る小宇宙」と彼が語るように、円熟さと生命力にみなぎった珠玉の一枚。
  • Mankunku Quartet
    Yakhal' Inkomo
    南アフリカ共和国のジャズ・サックス奏者、ウィンストン“マンクンク”ンゴズィ率いるカルテットの1968年作。ホレス・シルヴァーとジョン・コルトレーンのカバー、そしてオリジナル曲「Dedication (To Daddy Trane and Brother Shorter)」と「Yakhal' Inkomo」の全4曲は、全て圧巻のクオリティ。モダンジャズへの深い造詣を詰め込み、アパルトヘイトへの共闘を表明した本作は、南ア・ジャズシーンの最重要作。

Shingo Suzuki(ベーシスト、トラックメーカー、プロデューサー)

Profile

HIP-HOP、JAZZ、SOULのグルーヴを軸に、卓越した演奏力と唯一無二のサンプリングセンスを持ち合わせたベーシスト、トラックメーカー、プロデューサー。1stアルバム『The Abstract Truth』は日本のみならずフランス、デンマークなどヨーロッパのHIP-HOPチャートでTOP10入り。世界中のLo-Fi Hip-Hopファンの間で話題になった「Night Lights with thirdiq」は累計300万回を超えるストリーミング再生数を記録。また、mabanua、関口シンゴと共にバンド、Ovall(オーバル)としても活動。フランスの国民的HIP-HOPバンド、HOCUS POCUSやIAM、フィリピンの人気バンド、UDDのボーカルArmi、青葉市子、SIRUPなど世界中のアーティストを招き音源をリリース。さらにヒップホップグループ GAGLEとのコラボ GAGLE×Ovallや、田島貴男(Original Love)とのジョイントプロジェクトなど様々なスタイルのコラボレーションを展開。FUJI ROCK FESTIVAL 、GREENROOM FESTIVAL、RISING SUN ROCK FESTIVAL、Sunset Liveなど日本全国の大型フェスや、台湾、フィリピンなどアジアツアーも成功させる。プロデューサー、ベーシストとしてもBTS (防弾少年団)、矢野顕子、七尾旅人、さかいゆう、20syl(HOCUS POCUS)など世界中のアーティストをサポート。さらに多数のCM楽曲やジングル、ドラマや映画の劇伴などを手がけている。2024年Shingo Suzukiの音楽に共鳴したアーティスト達が楽曲ごとに集結し、ジャズやソウルを軸にしながらも型にハマらないサウンドメイクで楽曲を表現するソロプロジェクト「L.Y.P.S(Liquid Yellow Portraits)」を始動した。

Morning Time Playlist
  • Kit Downes
    Vermillion
    キット・ダウンズの2022年のピアノトリオ作品。ベースはスウェーデン出身のペッター・エルド、ドラムはイギリス人のジェイムズ・マドレン。全体を通して品があり、抒情的で、広がりや自由さを感じることができる作品。ECMからの作品と納得できるその音楽は北米のジャズとは違ったサウンド、フィーリングが心身を癒してくれる。ピアノの音はECMらしい音で、個性があるスタンダードな音質。ヨーロピアン。バンドの三人のアンサンブルは無駄な緊張感がなく自然に揺らぎ歌う。3者の呼吸が素晴らしい。息が合っている、キットのタイム感は独特でこの揺らぎがバンドで一体となっていて、とても気持ちよく染み渡る。心をすっと整えてくれる音楽。静謐さが欲しい時にはこのアルバム。
  • Brian Blade & The Fellowship Band
    Brian Blade Fellowship
    ブライアン・ブレイドが率いるフェローシップ・バンドのフォーキで牧歌的であったり、アメリカの大陸を感じさせる雄大さ、広がりが好き。ジャズのスウィングの4ビートや2拍4拍にバックビートの効いたスネアが鳴るダンサブルなビールとは異なるドラミング。彼の紡ぎ出す歌心溢れる熱量たっぷりのサウンドがバンド全体で増幅される。シンプルなメロディーが次第に大きなサウンドになるその過程が好き。まるで旅をしているような気持ちにさせてくれる。忙しく毎日が過ぎてゆく中で、ひと時、このアルバムを聴いて忘れかけたピュアな自分の気持ちを取り戻せる。大切な家族、友人、を思い出し、素直になれる。そんな音楽。
Day Time Playlist
  • Joel Lyssarides
    Stay Now
    スウェーデンの若きピアニスト、ヨエルの2022の作品。クラシカルなテイストとジャズのフィーリングが融合したヨーロピアンサウンド。決して明るくぼやけたナイーブな作品ではない。ただし一本調子ではなく無限のグラデーションの陰影があり、各曲が力強い作品群のアルバムだと思う。光と影が感じとれ、その音は優しく優雅に広がってゆく。時に力強く、スリリングに展開される旋律が気持ちを高揚させてくれる。ピアノのボイシングがトリッキーなサウンドにならずにずっしりと重く響くとじたサウンド。ヨーロピアンでシンプルな響きのコード、ボイシングが重厚感を与える。全体を通してメランコリックな雰囲気に共感を覚えるのは自分が北国出身だからかもしれない。
  • Jaco Pastorius
    Word of Mouth
    僕は音楽を作っている時、時にはスランプに陥ってなかなか前に進めないことが時としてある。そんな時に聞くのがこのジャコの大傑作アルバム。とにかくエネルギーに満ち溢れていて、どの曲も爆発力があって、勇気をくれるし音楽の素晴らしさを実感できる。卓越したそのテクニックはもちろんどの曲のメロディやリズムも印象的で簡単には口ずさめないのだけど、心に残る。細かくフレーズを分解すると一音一音の的確さ、アイディアを発見できるしそれらを俯瞰して聴くと塊となって大きなメロディとなっている。フラクタルな物語り。ベースの可能性を無限に広げた彼のテクニカルで表情豊かな演奏を堪能したいし、その響きに興奮したいし、歌心溢れるメロディーに浸りたいし、バンド全体のアレンジに痺れたいし、とにかく大音量でジャコの音楽を浴びたい!
  • Joshua Redman
    Still Dreaming
    ジョシュアのテナーサックスのフレージングは他のどの奏者と比べても異なり、印象的。まずはタイム感が素敵。しっかり地に足がついていて、フワフワとした抽象的なフレーズもしっかり収まるので、すんなり心に入ってくる。バップ的なコードを細分化したアプローチ、ペンタトニックのシンプルなフレーズ、モーダルな展開がありつつも、独自の旋律がふんだんに展開され、とにかく洗練されているモダンなメロディの数々という印象。ブルースフィーリングも多分に感じられる。上質で密度のあるトーン、卓越したコントロールで音楽を奏でる。本作は彼の父であるデューイ・レッドマンのオマージュ的作品。この作品に参加している面子はデューイが参加した『Old and New Dreams』に影響を受けているそうで、この『Old and New Dreams』のメンバーに由縁のあるミュージシャンたち。難解な曲や、華やかな曲、激しい曲、、、一筋縄では行かないが、バンドの一体感が凄まじく説得力のあるアルバム。
  • Brad Mehldau
    Largo
    エレクトリックなエフェクトがピアノと共に重なったり、プリペアド・ピアノというピアノの低音弦にパテ処理をしたピアノを演奏したり。好奇心とユーモアに溢れるメルドーの本作は知的でユニークな彼の音楽性をよく表していると思う。純粋にピアノだけをシンプルに弾く作品も好きだけど、こんなことができるメルドーの広さ、奥行きが発見できることは知的好奇心をくすぐられます。どうやらオーバーダビングせずにレコーディングは進められていたようで、作り込まれていないインプロビゼーションの楽しさを伝えてくれる作品ではないでしょうか。総じて実験的でありながらポップであって、繰り返し聴きたくなる、中毒性のあるアルバムです。
Night Time Playlist
  • Roy Hargrove /Mulgrew Miller
    In Harmony
    脈々と続くジャズの歴史をその演奏、フレーズで表現できる彼らがデュオでストレートにスタンダードの曲を演奏したライブ盤。それぞれのアドリブフレーズのどれもが美しく心に響く。直球で正統派で、時代と共に進化してゆくジャズ。彼らの王道のフレーズが心地よい。ロイのI remember Cliffordの演奏は時に大胆でスリリングで、息を呑む。惜しくも二人ともこの世を去ってしまったけれど、その音楽は燦然と輝き続け、僕たちの心を温めてくれることでしょう。
  • Meshell Ndegeocello
    Bitter (Deluxe Edition)
    ミシェルの作品群の中で特に歌モノに特化していて、内省的なこのアルバムはクレイグ・ストリートがプロデューサーとして参加しているが、この音像は彼のサウンドプロデュースの力によるところも大きいと思う。例えばカサンドラ・ウイルソンのグラミーアルバム New Moon Daughterやそれに続くTraveling Milesなどのサウンドに現れるようなカラッとしたアコースティックギター、ボーカル、ドラムスの音と空間の広がり、空気感がこのミシェルのアルバムにも感じられその雰囲気はプロデューサーを立ててサウンドを作り込んだからこそ作られたのではないかと推測される。ミシェルの中ではスローテンポのバラードが多めの本作ではあるが、実はポップな作品でもあって、その点がより多くのリスナーに好まれているのではないでしょうか。
  • Robert Glasper
    Black Radio
    2000年代、この作品が現れる以前もジャズとヒップホップをシームレスに繋ぐといったアプローチは、この作品と似たような思想でアプローチされてきた。ライブやレコーディングされた音楽はあった。断片的に。それらを遥かに凌駕し一気に深く決定的に定義つけた作品がBlack Radioかもしれない。ジャズとヒップホップとの完全な融合で根底にはブルースがある。ラップのうねり、粘るリズムはバップのアドリブのグルーブ感であるし、全ては繋がっていて断片的に抽象的には多くのミュージシャンやリスナーは気がついていたのだけれども具現化仕切れずにいたかもしれない。グラスパーは見事に新たなスタンダードを作り上げた。美しい、彼の音だと一聴してわかるハーモニー、コードの流れはハンコックからSlam Villageまで広くインプットされ、練られてアウトプットされている。そのハーモニーと卓越したメロディにヒップホップミュージックのドラムのグルーブが生ドラムや時にはエディットされてファットに再び作り上げられる。ドラムミュージックであり、ジャズであり、ブルースであり、ヒップホップであり、ソウルミュージックである。Black Americam Musicである。
  • Pat Metheny Group
    Travels
    メセニーグループのこの作品は流れた瞬間からメランコリックにさせてくれる。シンセギターのトーンは表情豊かに演奏され、感情を揺さぶってくる。溜まった思いの丈を吐き出すような感覚。この作品の名の通り、旅を連想させる。旅に出かける時、道中で、帰路で、その先々で日常とは少し異なる感覚の中、隠れていた自分の心の中の一片が現れる。それはこの音楽で炙り出される。永遠に続かないから、旅には終着点があるから、メランコリックになるのかもしれない。旅先の空気、匂いに触れる旅先に想いを馳せるならば、このメセニーグループのTravelsは最適な音楽。

DJ MAO F.(DJ / 精神科医)

Profile

京都市在住。厳選されたアナログレコードによるJazzやFunkを基調とした洗練された選曲に定評がある。2019年から大人のための極上音楽パーティー “LUXE”を主宰。関西を中心に様々な現場でのプレイやラジオ番組へのMix提供を行う。その一方で精神科医としての顔も持ち、2022年4月に与謝野町に赴任。地域の精神医療を支える傍ら、京都府北部(丹後地域)へも音楽活動を広げている。また、与謝野町産ホップを使用した地ビール・ASOBIの公認アンバサダーを務める。 2024年4月には、丹後ちりめんによるオリジナルトートバッグをリリースするなどマルチに活躍する稀有な存在である。

Morning Time Playlist
  • 鈴木茂(Shigeru Suzuki)
    Sunset Hills Hotel RESERVATION CALENDAR
    細越麟太郎 の写真集「Sunset Hills Hotel」をイメージして、鈴木茂 プロデュースのもと制作された3部作の最終章。リゾート感と清涼感溢れるサウンドが京都の夏、うだるような暑い1日の始まりに、そよ風のように吹き抜けるだろう。夕方に聴くのも良し。1987年。
  • Pucho and His Latin Soul Brothers
    Yaina
    ラテンだけでなくソウルやジャズ、フュージョン、ファンクなどのブラックミュージックをクロスオーバーする名盤。夏といえばラテン、ラテンといえば熱狂的なイメージがあるかもしれないが、A1「Cease The Bombing」の涼やかさをつい求めたくなる。1971年。
Day Time Playlist
  • Lalo Schifrin
    Bullitt (Original Motion Picture Soundtrack)
    スティーブ・マックイーン主演映画『ブリット』のオリジナルサウンドトラック。作曲は『スパイ大作戦(Mission: Impossible)』のテーマなどでお馴染みのラロ・シフリン。映画音楽の枠に留まらない優れたジャズ、フュージョンを中心とした作品であり、映画鑑賞のようにTechnics Cafeの大音響で味わってほしい。『ブリット』で2時間は語れる。1968年。
  • Blue Mitchell
    Summer Soft
    京都に住んでいれば、一度は「打ち水」を見たことがあるかもしれない。夏に涼を呼び込む昔ながらの風習だが、DJならば音楽で涼をとる、言わば「打ち音」という概念があってもいいんじゃないだろうか。数々の名盤を残すジャズ・トランペッター、Blue Mitchellの作品でも特に清涼感が溢れ夏にぴったりな一枚。タイトル通り。1978年。
  • V.A. (Compiled By Rainer Trüby)
    Glücklich VI
    車ジャケでお馴染み、ドイツのレーベル・ Compost による大人気ラテン&ブラジリアン・コンピ『GLUCKLICH』の最新作が21年ぶりに登場し、多くのDJや音楽愛好家を歓喜させた(私もそのひとり)。Roy Ayers / Everybody Loves The Sunshineのカバーなど久方ぶりでもクオリティーは相変わらず一級品。このシリーズは夏に合う。2023年、コンピレーション。
  • SOFT
    Passing Tone
    地元・京都を中心に30年以上にわたってパーティーシーン、アンダーグラウンドシーンを牽引するバンド・SOFTの最新作。DJとバンドは異なるものの、同じ地元の者として、ほぼ私の人生に匹敵する長さで音楽活動を継続されることに頭が下がる思い。夕下がり頃から聴くと、より沁みる。2024年。
  • edbl & friends
    JPRK+Jackson Mathod
    Tom Mischらと並び南ロンドンを代表するアーティスト/プロデューサーとして躍進するedblが様々なミュージシャンとのコラボレーションを魅せるプロジェクト。短期間で多くの良作がリリースされている同プロジェクトだが、Jazzyで現行のLo-Fi hiphopテイストなAサイド、R &BテイストでグルーヴィーなBサイドと1枚で異なる味わいが楽しめる本作が個人的な白眉。2023年。
Night Time Playlist
  • Jason Kolàr
    Liquid Rhythm
    2023年は転機が続いた年だったが、その中の一つがAmbient musicとの遭遇だった。隣席の上司が大の音楽好きで、よく最近買ったレコードや音楽を教えてくれるが、本作はその象徴。偶然にも京都で本アーティストのライブがあり、私にとって初めてのAmbient liveだった。純粋に音楽が好きなことが伝わる着飾らない良い方だった。木琴の優美さが空間に漂う名盤。写真家でもある彼のセンスが光るジャケットにも注目。2022年。
  • Sven Wunder
    Late Again
    ストックホルムの音楽家、スヴェン・ワンダーが夜の訪れをテーマにした本作。タイトルにその世界観やテーマが全てが集約されている。まるで映画音楽のような壮大さと、宵の浮遊感を携えており、アルバム1枚をぜひ通して聴いていただきたい。きっとこれまでと違った一夜が過ごせることだろう。2023年。
  • Yusef Lateef
    Eastern Sounds
    「音楽の力」と聞くと、多くはフェスやコンサートでの連帯感ある、うねりに近い「動」のエネルギーをまずイメージするのではないかと思う。しかし、個人的には、さざなみのような感動が押し寄せて、独り静かに思わず涙するような「静」のエネルギーもあると思うのだ。それを証明してくれるのがジャズ・フルート&マルチ・リード奏者のYusef Lateefの本作だと思う。大名曲「Love Theme from Spartacus」を筆頭に、夜にしんみりと耳を傾けたい。1961年。

SECOND ROYAL RECORDS(Record Shop)

Profile

京都を拠点に活動するインディーズレーベルSECOND ROYAL RECORDSが運営するレコードショップ。国内・海外の新譜・中古レコード / カセット / CD / アーティストグッズなど様々なアイテムを取り扱っています。

〒602-8341 京都府京都市上京区三軒町48-11

Morning Time Playlist
  • 坂本龍一
    12
    2023年1月17日にリリースされた前作「async」以来、約6年ぶりとなるオリジナルアルバム。闘病生活の中で日記を書くように制作した音楽のスケッチから12曲を選び1枚のアルバムにまとめた作品集。ジャケットは「もの派」を代表する国際的な美術家、李禹煥(リ・ウファン)氏の描き下ろし。
  • 冥丁
    古風III
    日本の古い文化をモチーフにした唯一無二のオリジナリティーで、世界のエレクトロニック~アンビエントシーンで脚光を浴びる広島在住のアーティスト冥丁が三部作で展開するシリーズ『古風』の最終章となる『古風 III』のアナログ盤。
Day Time Playlist
  • The Entertainers
    ジ・エンターテイナーズ
    ブルー・アイドの爽快感を携えたアーリー'80s・モダンソウル名盤が初LPリイシュー。"Livin' For The Summer"がスマッシュ・ヒットしたサウス・カロライナのソウル・バンド、ジ・エンターテイナーズのファースト・アルバム。
  • Thiiird Place
    This is Thiiird Place
    ボーダレス・エイジレスなアイデンティティと真摯なメッセージを持つ13人編成のアフロ・ソウル・ジャズ・バンド、Thiiird Placeの1stフルアルバム。サブスク未配信のPat Methenyカバー「Last Train Home」も収録。
  • SUPER CATS
    SUPER CATS
    ジャイルス・ピーターソンもBBCで推薦した日本が誇るラウンジファンクバンドCAT BOYSが、新たなバンドSUPER CATSを結成しリリースしたデビューアルバム。
  • 柴田聡子
    Your Favorite Things
    前作『ぼちぼち銀河』から約2年ぶりとなる新作アルバムがアナログリリース。岡田拓郎が共同プロデュース&アレンジとミックスを担当。本人が10代の頃から接してきたというブラック・ミュージックへのアプローチも心地よく、ここにきてさらに新しい世界感を展開した大傑作。
  • SAGOSAID
    Tough Love Therapy
    オルタナティブロックを基調にしながらインディーロック、ポストパンク、ギャルカルチャーまでも取り込み、Beabadoobee、Snail Mail等、現行の海外アーティストとも比肩するバンドサウンドでリスナーの心を捉えているSAGOSAIDのフルアルバム。
Night Time Playlist
  • ZAZEN BOYS
    らんど
    向井 秀徳、吉兼 聡、松下 敦、MIYAによるZAZEN BOYSが、約12年ぶりのリリースとなるニューアルバム「らんど」を180g重量盤LP2枚組でリリース。ピースミュージック中村宗一郎氏があらためてレコード盤用にマスタリングを行っている。
  • SONIC YOUTH
    HITS ARE FOR SQUARES
    Beck、Mike D、Radiohead、Eddie Vedder等のアーティストがSONIC YOUTHの曲を1曲ずつセレクト。2008年にスターバックスのみでCD販売されたコンピレーションアルバムが、2024年ゴールド・カラー・ヴァイナル仕様でアナログ化。
  • The 1975
    Live From Gorilla, Manchester, UK / 01.02.20.2023
    2023年2月1日マンチェスターで行なったデビューアルバム『The 1975』再現ライブの模様を収録したライブアルバム。2013年のアルバムリリース以来初めての試みという貴重なライブをホワイト・カラー・ヴァイナルでアナログリリース。

立川 直樹(プロデューサー)

Message

今年の夏は本当に暑い。でも、その暑さもシュチュエーションに合った音楽を選ぶことによって、かなりクリアできる。音楽の魔法を一番感じられるのが”夏”かも知れないとすら思う。夏の思い出を反芻し、いろいろな情景を思い起こしていたら、何故か60年代と70年代のアルバムで、リストが埋まってしまった。

Playlist
  • フランソワーズ・アルディ
    アルディのおとぎ話
    70年代の初頭、「さよならを教えて」(自慢じゃないが、この邦題は僕がつけた)の大ヒットでフランス女性シンガーNO,1になったアルディの2作目。アンニュイで知的な音楽は彼女ならでは。この6月11日に80歳でこの世を去った歌姫を偲んで…
    この世を去った歌姫は2023年にローリング・ストーン誌が発表した「史上、最も偉大な歌手200人」にフランス人として唯一選ばれた。
  • ドアーズ
    太陽を待ちながら
    死後半世紀以上が過ぎた今もその人気とカリスマ性が衰えることがないジム・モリソンがヴォーカリストを務めた伝説のバンド、ドアーズの35作目。「スパニッシュ・キャラバン」と名曲「誉は去りゆく」が流れ出すと世界は一変する。
  • ピンク・フロイド
    モア
    「歓喜と悲劇が交錯する果てのないトリップ。すべては陶酔の世界へ......」という宣伝文句で公開された映画「モア」のサントラ盤はピンク・フロイド3作目のアルバムとして1969年に発表された。イビサの60年代の危ない夏に連れていかれる。
  • サンタナ
    キャラバンサライ
    1969年のウッドストック・フェスティバルで一躍注目の存在になり、今なお第一線で活躍を続けているサンタナの錬金術的秘法が全編にあふれている大傑作。夏にぴったりのアルバムで、音楽で最高のトリップを体験できる。1972年作品。
  • ライ・クーダー
    紫の峡谷
    自身の名前を冠したアルバムでデビューしてから丸54年、ライ・クーダーのアルバムはどれも、時代も流行も超えている。1930年代から50年代の曲を彼なりのやり方で料理したこの作目もジャケットのヴィジュアルも含めて”永遠の名盤”と言われている。
  • マドンナ
    トゥルー・ブルー
    「ライク・ア・ヴァージン」が全世界で1500万枚も売れるウルトラ・ヒットになり、85年のトップ・アーティストとして数多くの記録を樹立したマドンナはこの次回作でさらに大きくなった。「ラ・イスラ・ボニータ~美しき島」は絶対的な”夏の歌”だと思う。
  • ナット・キング・コール
    ベスト20
    魅惑の低音で一世を風靡したナット・キング・コールは来年で死後80年を迎える。レコーディングの魔法で娘のナタリー・コールとデュエットした「アンフォゲッタブル」で時代を超えて蘇ったスター歌手の名曲集は最高にロマンティック。大ヒット曲「暑い夏をぶっとばせ」で、暑い夏がのりきれそう…
  • ポール・アンカ
    オリジナル・ポール・アンカ・コレクション
    1957年の夏、日本でも大ヒットした「ダイアナ」から1960年発売の「アダムとイヴの物語」まで全15曲。天才ポール・アンカの歌は「アメリカン・グラフィティ」で描かれていた古き良きアメリカの夏の情景をフラッシュバックさせてくれる。
  • ジョン・セバスチャン
    栄光の軌跡 /ベスト・オブ・ザ・ラヴィル・スプーンフル
    1965年夏のデビュー・シングル「魔法を信じるかい?」の大ヒットからヒット曲を連発しながら、2年と少しで消えてしまったラヴィン・スプーンフルの音楽は夏色をしている。ジョー・コッカーもカバーしている「サマー・イン・ザ・シティ」は極めつけの名曲。
  • マイケル・フランクス
    シティ・エレガンス
    ”AOR”-アダルト・オリエンタル・ロックの名作で70年代後半に一大ブームとなったムーブメントの中心人物、マイケル・フランクスの名作。名プロデューサー、トミー・リピューマンと凄腕のミュージシャンをバックに歌われる名曲の数々。ラストの「ヴィヴァルディズ・ソング」は絶対に泣かされる。