テクニクス「SC-C70MK2」は、新生活を豊かに彩る素敵なオールインワンシステムだ。ラジオからハイレゾ、レコードまでこの音で楽しめる幸せを実感する(後編)

テクニクス「SC-C70MK2」は、新生活を豊かに彩る素敵なオールインワンシステムだ。ラジオからハイレゾ、レコードまでこの音で楽しめる幸せを実感する(後編)

WEB「Stereo Sound ONLINE」https://online.stereosound.co.jp
2021年03⽉12⽇掲載

執筆:和田博巳

テクニクスのスタイリッシュで多機能なオールインワンシステム、OTTAVA ƒ(オッターヴァフォルテ)「SC-C70MK2」の魅力紹介、今回はその後編である。

前編では、初代モデル「SC-C70」からの進化ポイント「Space Tune Auto」の機能や「Chromecast(クロームキャスト)built-in」への対応を中心にお伝えした。Chromecastではスマートフォンやタブレットにインストールした対応アプリを使って各種ストリーミングサービスを楽しむことが可能となる。

加えて本機はネットワーク内にGoogleアシスタント搭載機器があれば、「OK Google」にも対応する。つまりダイレクトに音声で起動や音楽再生を指示することができるようになる。命令するのは「少々恥ずかしい」という人もいらっしゃるかもしれない(私もそうだが)、でも「OK Google」はたいそう便利な機能である。

レコードのある生活も、簡単に手に入る。
SC-C70MK2とSL-1500Cの組み合わせで音楽ライフがさらに充実

SC-C70MK2とSL-1500C

SC-C70MK2はCDからハイレゾ音源、FM/AMラジオやインターネットのストリーミングコンテンツまで、現在考えられるほとんどの音楽ソースをこれ一台楽しめる。そこにもうひとつ、アナログレコードを加えることはできないか、というテーマも試してもらった。

そのために組み合わせたのがテクニクスのアナログレコードプレーヤー「SL-1500C」。上位モデルで開発された技術を受け継いだ普及価格帯の製品で、テクニクス機の特長ともいえるダイレクトドライブ方式を採用、なんと78回転のレコードも再生できる。

さらにSL-1500Cはレコード再生に必要なカートリッジも付属しているし、MM型フォノイコライザー機能も内蔵している。つまり背面スイッチからフォノイコライザーを経由した信号が再生可能で、ここからの信号をSC-C70MK2の3.5mmのアナログ入力端子につなぐだけで、レコードの音を楽しめることになる。

SC-C70MK2とSL-1500C 背面
SC-C70MK2とSL-1500Cを組み合わせてアナログレコードを聴きたい場合は、別売のRCA→3.5mm変換ケーブルを準備し、それで両者をつなげばいい。これだけでレコードを楽しめるというのも大きな魅力だろう

さて、SC-C70MK2を購入したらぜひともお薦めしたいのが、アナログレコード再生である。もちろん別途アナログプレーヤーを購入する必要があるが、テクニクスには「SL-1500C」という本機と価格的にもピッタリの実に魅力的なアナログプレーヤーがラインナップされている。

ご存知のようにアナログレコード再生はここ数年再び、いや再びと書くとベテランのオーディオファイルを対象にしているようだが、実は若い人の間でも人気が高まっていて、CDが年々売り上げを減少させてゆく中、アナログレコードは着実に売り上げを伸ばしている。というわけで、後編ではこのSL-1500Cを使った「アナログレコード再生の愉しみ」を紹介しよう。

テクニクスのダイレクトドライブ方式アナログレコードプレーヤー、SL-1500Cの価格は10万円ジャスト(税別)(※2023年2月1日より¥130,000(税込)に価格変更)。しかも本機にはオルトフォンのMM型カートリッジ「2M Red」(約¥14,000)が付属し、本体内にはMM用フォノイコライザーも内蔵している。カートリッジが付属するアナログプレーヤーを見ることはあるが、フォノイコライザーを最初から搭載したモデルはかなり稀である。

したがって、SC-C70MK2とSL-1500Cを接続すればすぐに音が出る、この簡便さは嬉しい。SL-1500Cの低価格の秘密は、ストロボスコープやピッチコントロールなど普段あまり必要のない機能を省略し、プラッターを若干軽くしてコストダウンを図ったためだ。とは言えトーンアームは上級モデルの「SL-1200GR」に搭載されるものと同じで、さらに便利なオートリフトアップ機能が追加されている。それでこの価格はどう考えてもバーゲンプライスとしか思えない。

●レコードプレーヤー
SL-1500C ¥100,000(税別)※

SL-1500C
プレーヤー部
●駆動方式:ダイレクトドライブ
●モーター:コアレス・ダイレクトドライブモーター
●回転数:33・1/3、45、78rpm
●ターンテーブル:アルミダイキャスト、2層構造
●出力端子:Phono端子×1、LINE端子×1
●寸法/重量:W453×H169×D372mm/約9.9kg
●備考:MM型対応フォノイコライザー、アームリフター内蔵
カートリッジ部(オルトフォン2M Red)
●型式:MM型
●出力電圧:5.5mV
●適正針圧:1.8g
トーンアーム部
●型式:スタティックバランス型
●有効長:230mm
●適合カートリッジ重量:14.3~25.1g(ヘッドシェル含む)
(※)2023年2月1日より¥130,000(税込)に価格変更
SL-1500C 背面
SL-1500Cのリアパネル。中央のやや奥まった部分に端子類が搭載されている。ふたつ並んだRCA出力の左側は外部のフォノイコライザーとつなぐための出力で、右は内蔵MMフォノイコライザーを経由したライン出力(オン/オフ可能)

本機のみならずテクニクスSLシリーズの長所として、セッティングや調整が比較的容易ということが挙げられる。それは裏を返せば、長年の歴史から生まれたSLシリーズの細部にわたる完成度の高さと言えるわけだ。注意点としては、設置はできるだけしっかりとした台やラックの上に水平に置くことである。SC-C70MK2とSL-1500Cは頑丈な棚の上であれば並べて置いてももちろん問題ない。

わが家の場合、リビング窓際の棚の強度は充分だが、レコードプレーヤーを置くには奥行きが若干不足していたので、棚の下に別途オーディオラックを置いてSL-1500Cをセット。この状態でフルボリュウムにしてもハウリングはまったく生じなかった。SL-1500Cの出力端子(内蔵フォノイコライザーはオン)をSC-C70MK2のAUX端子に入力すれば、これで準備はOKである。

ステレオサウンドから発売された高音質LP、ザ・ピーナッツ『The First Decade The Peanuts 1959〜1967』(販売終了)を聴くと、2人の絶妙なハーモニーが弾けんばかりに飛び出した。歌声は中高域が明るい印象で、ベースは安定して明瞭なラインを浮かび上がらせる。

和田邸のリビング窓際に置いてあるSC-C70MK2とその下のSL-1500C
和田邸のリビング窓際にSC-C70MK2を置き、その下にオーディオ用ラックをセットしてSL-1500Cを載せている。アナログレコードのある豊かな生活とは、こういうことなのかも

ジャックリーヌ・デュプレ『エルガー:チェロ協奏曲』はなかなか手強いソースだが、チェロがヒステリックにならず鮮明感も程よい感じだった。この曲で特徴的な、みなぎる緊張感はそれほど強調しないが、汚れた音にならないのが素晴らしい。フォルテッシモで歪みやすいソースなので。

先日、解散のニュースが飛び込んできたフランスのEDMユニット、ダフト・パンク。そのダフト・パンクのエレクトロニカではなく、生演奏によるダンス音楽の大ヒットアルバム『Random Access Memories』は音のいいレコードとしても大推薦盤だ。アルバムから1曲目を聴くと、この小さなオールインワンから実に迫力満点の音が飛び出した。パワーにも充分余裕が感じられる闊達な音である。リビングルームがダンスフロアーに化ける(と言うほど広いリビングではないけれど)。

MM型カートリッジ2M Redは万能的に使えるカートリッジで、内蔵フォノイコライザーアンプはMM型専用だが、本機の価格を考慮すれば、こちらも期待に応えるものといえる。SC-C70MK2の<アンプ+スピーカーシステム>としての性能は、SL-1500Cを使ったアナログ再生でも充分に優れていることがわかった。これからアナログ再生にもチャレンジしたいと考える人には入門用としては文句なしと思う。

●一体型オーディオシステム
SC-C70MK2 ¥100,000(税別)※

SC-C70MK2
  • ●スピーカー形式:2ウェイ2スピーカー、密閉型+サブウーファー
  • ●使用ユニット:20mmドーム型トゥイーター、80mmコーン型ウーファー、120mmコーン型サブウーファー
  • ●アンプ部定格出力:30W×2(フロントスピーカー、1kHz、THD 1.0%、6Ω、20kHz LPF、JEITA)、40W(サブウーファー、70Hz、THD 1.0%、4Ω、20kHz LPF、JEITA)
  • ●再生可能ディスク:CD、CD-R、CD-RW(フォーマットはCD-DA)
  • ●Bluetooth対応コーデック:AAC、SBC
  • ●接続端子:デジタル音声入力(光)、3.5mmピンジャック、3.5mmヘッドホン出力、USB Type-A(対応メモリー容量最大2Tバイト)、LAN端子(100BASE-TX、10BASE-T)、他
  • ●USB/ネットワーク再生時サポートフォーマット:WAV/AIFF(32、44.1、48、88.2、96、176.4、192、352.8、384kHz/16、24、32ビット)、FLAC/ALAC(32、44.1、48、88.2、96、176.4、192、352.8、384kHz/16、24ビット)、DSD(2.8、5.6、11.2MHz)、AAC(32、44.1、48、88.2、96kHz/16〜320kbps)、MP3(32、44.1、48kHz/16〜320kbps)
  • ●特長:FM/AMチューナー内蔵、自動音質調整「Space Tune Auto」、Chromecast Built-in、音楽ストリーミング対応(インターネットラジオ、Spotify Connect、Deezer)、他
  • ●消費電力:45W(待機時・Network Standby Off・時計表示あり 約1.3W)
  • ●寸法/質量:W450×H143×D280mm/約8.0kg
  • (※)2023年2月1日より¥130,000(税込)に価格変更
SC-C70MK2 背面
SC-C70MK2の背面には、3.5mmアナログ入力、光デジタル入力、USB Type-A、LAN端子、FM/AMアンテナ入力が並ぶ。Type-A端子にUSBメモリーを挿して、そこに保存したハイレゾ音源の再生も可能

実はSL-1500Cは以前ステレオサウンド試聴室でもテストをしていて、その時、内蔵フォノイコライザーをオフにして、2M Redの出力をアキュフェーズのフォノイコライザーアンプ「C-47」に入力してみたが、この音がなかなかよかった。さらにカートリッジをフェーズメーション「PP-2000」に替えて聴いた音もまことに素晴らしかった。

両方合わせた価格は100万円を超えるので、SL-1500Cに対してはおよそ非現実的な組み合わせと言えるが、『エルガー:チェロ協奏曲』はチェロや弦楽合奏の音色に艶やかさが増し、鮮烈な切れ込みも目が覚めるよう。PP-2000とC-47のポテンシャルをしっかりと伝えることが出来るSL-1500Cの実力の高さを再確認した。

そうなると将来的には、無理のない範囲でMC型カートリッジやMC型対応フォノイコライザーアンプの導入も視野に入れることができるわけである。SC-C70MK2はデジタルのみならず、アナログ再生でも存分に活躍をしてくれるだろう。



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