テクニクスの完全ワイヤレスイヤホン「EAH-AZ70W」は、高い音楽再現性を備え、使い勝手が進化していくことで、ライフスタイルを豊かに彩ってくれる
完全ワイヤレスイヤホンの登場は巷の音楽再生事情を一変させた。タイミング良く定額制音楽ストリーミングサービスが登場し、スマホやタブレットで聴き放題の音楽を楽しめるようになったのも大きいだろう。今や街中では、多くの方がケーブルのないイヤホンを装着して音楽を聴いている。スマホにハンズフリーの通話機能や専用のアプリをインストールして、有線のイヤホンではなし得なかった様々な機能を使うこともできる。
そのような完全ワイヤレスイヤホン市場に、2020年に満を持して参入したのがパナソニック/テクニクスだった。パナソニックブランドから「RZ-S30W」と「RZ-S50W」の2種類、そしてテクニクスからは「EAH-AZ70W」の合計3種類が登場したのだ。
“ミュージック(M:音質向上)/コミュニケーション(C:接続安定性/通話品質の向上)/ノイズキャンセリング(N)”のコンセプトを掲げ、それを具現化するために同社の様々なジャンルの開発に携わった精鋭メンバーが集結し、持てる技術を惜しげもなく投入。その結果、音質、Bluetooth通信の安定性、ノイズキャンセリング能力、通話品質など、初めての完全ワイヤレスイヤホンとは思えない全方位的に完成度の高い製品が出来上がった。
日々持ち歩いて日常使いの1台になった「EAH-AZ70W」
特にEAH-AZ70Wは筆者の愛用モデルで、いつしか普段から持ち歩く1台になっている。
その理由は4点ある。1点目はやはり音質だ。ハードウェア開発部 主幹技師の小長谷 賢さんを中心に苦労して音作りをしただけあり、そのクォリティは高い。グラフェンコートのPEEK素材を採用する大口径φ10mmのダイナミック型ドライバーを搭載し、さらにテクニクスの最上位ワイヤードイヤホン「EAH-TZ700」が備える、ドライバー前後の空気の流れを制御する「アコースティックコントロールチャンバー」も搭載する。音質チューニングも徹底されており、ワイドレンジで音楽性豊かな音が気に入っている。
2点目は、ノイズキャンセリングの性能が高かったことだ。本機はハウジング外部/内部に2つのマイクを搭載し、デジタル式/アナログ式を採用する「デュアルハイブリッドノイズキャンセリング」を搭載。カフェから電車内まで、外音の質が違う幅広いシーンで強力なノイズキャンセリングを発揮し、しかもノイズキャンセリングを効かせても音質低下が最小限である。
3点目は、音質に注力してきたテクニクスブランドだということ。オーディオ少年時代から同社の活躍を知っていた私にとって、ハウジングに刻まれるテクニクスのロゴは誇らしい。
そして最後の点、実はこれが最も大きいのだが、EAH-AZ70Wはファームウェアのアップデートを繰り返すことでユーザビリティが向上し、どんどん使いやすく進化しているのだ。
記事執筆にあたりバージョンアップの履歴を確認したのだが、発売されてから既に5回も行なわれている。
ユーザーの声に応え、操作性・機能の改良を継続して実施
2020年6月に実施された初めてのバージョンアップでは、タッチセンサー操作時の長押し時間を変更し、ノイズキャンセリングのON/OFF/アンビエント機能を切替える時のユーザビリティが向上した。併せて、充電ケースからイヤホン本体を取り出した後、組み合わせるBluetooth機器への接続時間が短縮し、さらにBluetooth接続先の切り換え方法も改善された。
同年8月のバージョンアップでは、Bluetooth接続中にイヤホンLEDの点滅/消灯を選択できるようになった。細かい改善だが、ユーザーの意見を取り入れてくれたのだろうと推測できる。そして、10月にはアンビエント(外音取り込み)機能にメスが入り、取り込まれた外の音がより自然に聞こえる改善を実施。12月にはタッチセンサーを長押しする外音モードの切替えがカスタマイズできるようになり、さらにタッチセンサー操作の一括無効化機能を追加、加えてBluetooth接続時の接続性の改善も行なわれている。そして今年2月に、タッチセンサー操作全般のカスタマイズ機能が実装され、送話品質も改善された。
ここから分かることは、操作性の向上、Bluetoothの接続安定性、さらに通話品質の向上まで、多方面に改良が施されているのだ。ファームウェアによるアップデートは他のブランドでも実施されているが、ここまでの内容はなかなか聞いたことがないし、特に継続してアップデートが施されていることは特筆できる。
アップデート手順も簡単で、まず、スマートフォン、タブレットにインストールする専用アプリ「Technics Audio Connect」を最新バージョンに更新後、イヤホンとペアリング(いつものように音楽が聴ける状態)して、アプリのホーム画面右上の工具アイコンをタップ → ヘッドホン製品情報 → ファームウェアバージョンの表示部より「更新」ボタンをタップすればよい。
最新ファームウェアを適応後は、タッチセンサーを押した時の動作を自分好みにカスタマイズできるようになる。例えば、シングルタップ(センサーを1回タップ)した場合、今までは再生/停止の動作だったが、設定を変更することで、曲送り/曲戻し、音量、外音コントロールの切り替え、ノイズキャンセリングの有効化などに割り当てることができる。
また、ダブルタップ/トリプルタップ/長押しなど各動作でも同じように機能を割り振れるようになる。これにより、ユーザーの感覚に動作を合わせたり、さらに今まで使用していた機種から機種変更しても、同じ感覚で操作することも可能になった。また、同時比較ではないが、家族に協力してもらって通話品質のテストを行なったところ、確かに本機を介して自分から話し相手に伝わる声がよりクリアになった印象を受けた。
オーディオブランドが創り上げた「Technicsサウンド」を持ち歩ける
そして音質についても改めて記しておきたいが、EAH-AZ70Wは同社の完全ワイヤレスモデルの中で最上位に位置するだけあり、高域から低域までのfレンジが広く、聴感上分解能が高いサウンドである。対応ジャンルも広く、EDMであればエレクトリックシンセサイザーには透明感があり、エレクトリックバスドラムのキレも良い。ポップスなどのヴォーカル曲は、アーティストの距離感が抜群でバックミュージックとの分離も良い。センターに位置する音像も明瞭だが、サウンドステージの広さがあり、大口径振動板を活かした強力な低域と合わせ、クラシックのオーケストラも秀逸に表現してくれる。やはり、音質についてはオーディオメーカーの一日の長を感じる。
先述した通り、完全ワイヤレスイヤホンは従来のワイヤードイヤホンと比べてできることが多く、メーカーにはたいへん高い開発力が求められる。そして、多機能かつケーブルの呪縛から解放されるので、室内の音楽リスニング時から外出時まで、多くのシーンで使用するようになる。だから使い勝手がよくなるとライフスタイルが向上する効果を及ぼすほどだ。
今回はEAH-AZ70Wの魅力について、特に機能とユーザビリティ向上に焦点を当ててお伝えした。巷にはたくさんの完全ワイヤレスイヤホンが存在し、パッと見は同じようだが、音質から機能まで多くの違いがある。何回ものアップデートを行ない、ユーザビリティ向上を成し遂げていることに、潤沢な開発力、および開発リソースを持つ同社のアドバンテージを感じずにはいられない。
そして、もう1つ。アップデートでもたらされた改良の中には、タッチ操作時間のわずかな変更など、一瞬些細に感じる変更も含まれているが、これこそテクニクス/パナソニックのスタッフが真剣に取り組んでいる証だと筆者は思う。3モデルの発表会に参加した時、良いものを作ろうとする彼らの一所懸命さが伝わってきたが、EAH-AZ70Wを聞いているとそのときのことを思い出す。
EAH-AZ70Wは音質、使い勝手も良いので、最初に買う1台としてもいいし、今使っているモデルからのグレードアップにもオススメだ。また、同時発表された「RZ-S30W」と「RZ-S50W」も同じようにファームウェアアップデートを実施してユーザビリティが大きく向上したので、これらのモデルを使用シーンに合わせて選んでも良いと思う。