SL-1200シリーズの歴史
SL-1200シリーズは、アナログレコードの全盛期であった1972年のSL-1200を皮切りに2022年のSL-1200GAE-Kまで、計15機種を発売。 50年にわたり展開してきたSL-1200シリーズは、「レコードプレーヤー」の枠を超え、DJのための「楽器」としての進化を遂げました。
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1972
SL-1200- ディスコ/クラブ・シーンにおける最初のスタンダード機
- 1972年に発売されたSL-1200は、現在もなお受け継がれるSL-1200シリーズの元祖となるモデルです。SL-1200は、ダイレクトドライブに象徴される高性能を収めたコンパクトな筐体が特徴的でした。1/2回転で完全に立ち上がる素早いキューイングを実現したダイレクトドライブや、回転ムラも少なく大型で重量感のあるターンテーブル、アルミダイキャスト製の堅牢なキャビネットが施されていました。SL-1200のこのような特徴は、当時米国を中心に台頭してきたディスコ/クラブ・カルチャーのニーズとの一致。トルクの強さや回転ムラの少なさは、早い音の立ち上がりやキューイングを容易にし、振動に強いキャビネットによりディスコのような大音量で振動の多いタフな環境でのプレイで発生するハウリングなどから解放しました。また、本来はモーターの回転数の誤差を調整するために使われていたピッチ調整用のつまみを、DJ達はレコードのBPM (Beats Per Minute)を合わせるために使用するという、まったく新しい使用法をあみだしました。SL-1200はディスコ/クラブ・シーンにおけるスタンダードとなり、後のSL-1200MK2開発のきっかけとなります。
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1979
SL-1200MK2- 「DJのための機能」を搭載した初のターンテーブル
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SL-1200MK2の誕生。それは、世界初の「ディスコ/クラブにおけるDJユース」という概念を取り入れたターンテーブルの誕生を意味します。SL-1200から大きく変わった点としてまず挙げられるのが、クオーツロック方式の導入。時計を制御する方法として知られる、クオーツロック方式の導入により、より精度の高い回転制御が可能になりました。これにより、本来は回転数の誤差を調整する目的で使われていたピッチコントローラーは必要なくなりました。しかし、DJ達の「BPM/ピッチを調整するために使用している」という全く新しい使い方に合わせてDJにとっての使いやすい、フェーダー型のピッチコントローラーが誕生しました。
徹底したキャビネット部分の防振構造も、ディスコ/クラブでの使用を見据えた改良点です。上部がアルミダイキャスト、下部が一体成型された特殊ゴムで、4つの大型インシュレーターにより、ディスコ/クラブでの大音量下の環境にも耐え得る仕様となっています。SL-1200MK2は、それまでのターンテーブルの常識=レコードを再生する「プレーヤー」から、レコードを演奏する「楽器」へと進化し始めたモデルと言えます。
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1989
SL-1200MK3- クラブ・カルチャー成熟を象徴するターンテーブル
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SL-1200シリーズにとってエポック・メイキング的な存在となったSL-1200MK2の発売から10年後の1989年に、日本国内向けのモデル:SL-1200MK3が発売されました。基本的な構造はSL-1200MK2とほとんど変わらないこのSL-1200MK3ですが、発売された背景には、日本国内の音楽シーンが少なからず影響していました。日本でも、80年代後半にはディスコ文化が一般に認知され、国内でのDJユースのターンテーブル需要が増加し始めたのがこのSL-1200MK3の発売時期に当たります。
SL-1200MK2ではディスコ/クラブに対応できる防振構造を確保しましたが、SL-1200MK3ではその構造に加え、内部にT.N.R.C(Technics Non Resonance Compound)という独自の素材を充填。さらに強固な防振対策が施されました。注目すべきは、付属品としてスリップマットをSL-1200MK3から同梱。スクラッチやキューイングを多用するDJ達は、元来付属していたゴム製のマットではなく、自作のスリップマットを作成していましたが、このモデルより同梱するようになりました。SL-1200シリーズはSL-1200MK2からさまざまな面でDJユースに配慮した仕様へと改良されましたが、SL-1200MK3以降はターンテーブル自体の性能のみならず、付属アクセサリーにもDJユースという観点が反映されていくこととなります。
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1995
SL-1200LTD- 世界累計販売台数200万台を記念した限定販売モデル
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1995年、SL-1200シリーズは世界累計販売台数200万台を突破し、それを記念して発売されたのがSL-1200LTDです。生産台数は5,000台に限定され、シリアルナンバー・プレートには通し番号が刻印されました。ターンテーブル/トーンアーム/アームベース部分に24金メッキを使用したそのきらびやかな筐体は、バトルDJの祭典:DMC世界大会で優勝者に贈呈されるゴールドのターンテーブルを彷彿させます。
筐体は基本的にSL-1200MK3を踏襲したものですが、SL-1200MK3の基本仕様に加え、SL-1200LTDではピッチコントローラーにリセットボタンが搭載されました。フェーダーの位置に関わらず、このボタンを押せば自動的にピッチが±0%に戻るというもので、この機能は後のSL-1200MK3Dにも搭載されます。
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1997
SL-1200MK3D- 数々の細かい新機能が強めた楽器的性格
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SL-1200MK3のマイナー・チェンジ・バージョンとして、SL-1200MK3Dが発売されたのが1997年。この頃には日本国内のディスコ/クラブ・シーンも完全に定着、90年代中盤のDJブームを経ての発売となりました。
SL-1200MK3DからSL-1200MK2を強く連想させるシルバーのキャビネットが復活。基本性能はSL-1200MK3を踏襲しながらも、随所にDJにとって使い勝手が良くなるように配慮した仕様となっています。SL-1200LTDで初めて搭載されたピッチコントローラーのリセットボタンはSL-1200MK3Dでも継承。細かい改良ですが、ピッチコントローラーの±0%近辺に今まで存在していた「センタークリック」がSL-1200MK3Dではなくなっています。これにより、今までは難しかった±0%付近でのピッチ調整の精度が向上。ほかには、予備のヘッドシェルを立てておけるヘッドシェルスタンドや、SL-1200MK3/SL-1200LTDまではスイッチ上部が剥き出しになっていたため、操作中に誤ってスイッチ部分を触ると電源を切ってしまうというアクシデントが起こり得た電源スイッチの改良など、クラブ/ディスコという「現場」を強く意識した細かい改良点があります。SL-1200シリーズはSL-1200MK3Dの登場を経て、ますます「楽器」としての性格を強めていきました。尚、2000年には同機能でブラックのキャビネットのモデルも発売されたため、SL-1200MK3Dには2色のバージョンが存在します。
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1997
SL-1200MK4- SP盤にも対応。高音質化をより追求したモデル
- SP盤を再生するための78回転への対応やPHONO端子をケーブル着脱式とするなどの改良が施され、トーンアーム内部の配線材をOFC(無酸素銅)とするなど、さらに高音質化を徹底したモデルです。
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2002
SL-1200MK5- 長年の積み重ねが反映された30周年記念モデル
- SL-1200シリーズ発売30周年に当たる2002年に発売されたSL-1200MK5。DJの要望する細かい付加機能の追加を中心に改良されたのがSL-1200MK3Dとするならば、SL-1200MK5は目立った改良ではなく、永年受け継がれてきた基本性能の精度を高めることにより、デリケートな操作が要求されるDJ達の意見を反映させたと言えます。例えば、ブレーキの調整がターンテーブルを着脱しなくても簡単に調整できるように改善。針先を照らすスタイラスイルミネーターも、白色LEDに変更され、高輝度/長寿命を実現しました。DJのプレイ・スタイルに合わせて、好みの針圧に簡単に調整できるようアームウェイトの取り付け部目盛りも追加。最初期モデルから30年余り。SL-1200シリーズが受け継いできた「変わらない美学」は、長年に渡る細かい改良の積み重ねによって成り立っていることが分かります。
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2002
SL-1200MK5G- 音質/機能ともに多くの改良が施されたSL-1200MK5上位機種
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2002年にSL-1200MK5と同時発売されたSL-1200MK5Gは、SL-1200MK5の上位機種という位置付けで、機能の多さや外観の変更など、多くの点で改良が施されました。
特筆すべきは、アーム部分の変更。スクラッチなど、「楽器としてのDJ仕様」を重視し、トレースに優れた性能を発揮するS字型トーンアーム(これにより、高感度/高音質を実現)架台部に、水平加重調整機構を搭載。この調整機構により、針飛びしにくい仕様となっています。さらに、従来の±8%に加え、±16%まで調整が可能となり、交換も容易となったピッチコントローラーの大幅な改良も、「楽器としてのDJ仕様」を強く意識したものです。また、クラブ・プレイ等の現場を検証し、ダンス・ミュージック、スクラッチなどのDJサウンドを豊かに表現できるよう、OFC(無酸素銅)を採用したアーム線などの改良により、音質の改善も実現。見えない部分での改良も特長と言えます。
また、見える部分での最も大きな変更点は、スタイラスイルミネーターやピッチコントローラー部分に高輝度ブルーLEDを採用したことです。今までの白色のイルミネーションに比べ、視認性も向上。メタリックブラック塗装の高品位なトップパネルは重厚且つ高級な印象を与え、21世紀のSL-1200に相応しい外観に仕上がっています。
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2004
SL-1200GLD- 世界累計生産台数300万台達成を記念した限定モデル
- 2004年、SL-1200シリーズの世界累計生産台数300万台達成を記念して発売されました。SL-1200MK5Gをベースにし、トーンアームなどに24金メッキを多用。上面を光沢ブラック仕上げとし、さらに限定シリアルナンバーを刻印した記念プレートを装着したモデルです。
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2008
SL-1200MK6- 世界のDJから支持されるSL-1200シリーズ誕生35周年に開発されたモデル
- SL-1200シリーズの世界累計生産台数は、2007年に約350万台を記録しました。SL-1200MK6は多様化する音楽シーンやパフォーマンスを重視するDJに照準を合わせ、より音質の向上と機能を充実し、SL-1200シリーズ誕生35周年に開発されたモデルです。S字形トーンアームの色変更に加えて内部配線へのOFC(無酸素銅)の採用、3層構造キャビネット、スタイラスイルミネーターへの青色LEDの採用。世界から支持されるSL-1200シリーズの高性能・高信頼性の特長を継承しながらさらに進化したモデルです。尚、2007年にはSL-1200シリーズ誕生35周年記念プレミアム付 限定販売モデル SL-1200MK6K1も同時発表。2007年12月にSL-1200MK6K1が発売されました。
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2016
SL-1200GAE-S- Technics50周年を記念した、世界で1,200台の限定モデル
- 1965年からスタートしたTechnicsブランドの50周年を記念して世界で1,200台、国内300台限定で発売されたSL-1200GAE-S。天面に貼付するプレートにはシリアルナンバーを刻印しました。新生Technicsのターンテーブルとして、内部構造は信頼性に優れるダイレクトドライブ方式を踏襲し、新開発「コアレス・ダイレクトドライブ・モーター」や厳選した部品により、従来よりもさらに安定した回転と振動低減を実現しました。さらに高精度にレコードをトレースするトーンアーム採用や3層構造プラッターや4層構造筐体による高い耐振動性など、高音質の観点で全て見直し、大幅に性能を向上させたモデルです。
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2016
SL-1200G-S- 高音質化設計に安定した回転と振動低減を実現したモデル
- 2016年、アナログレコードが、かつてレコードに親しんだ50歳代以上の男性を中心とした音楽愛好家だけでなく、初めてレコードに触れる10~30歳代の若年層の音楽愛好家からも関心が高まっている中、SL-1200GAE-Sと同等の機能を有するレギュラーモデルとして発売されたSL-1200G-S。新開発「コアレス・ダイレクトドライブ・モーター」により安定した回転と振動低減を実現したほか、トーンアームパイプの素材にSL-1200GAE-Sと同様、軽量かつ高減衰特性のマグネシウムを採用。真鍮板とアルミダイカストシャーシを強固に一体化したプラッター、10mm厚のアルミトップパネルを加えた4層構造の筐体を採用。SL-1200シリーズの従来モデルよりも大幅に性能を向上させたモデルです。
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2017
SL-1200GR-S- SL-1200シリーズの新たなスタンダードモデル
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近年ではアナログレコードの需要は年々増加しており、音楽配信サービスに代表されるデジタルオーディオ時代にアナログレコードの音質も含めた魅力が再認識されています。
SL-1200Gの技術を継承しながら、シングルローター型の「コアレス・ダイレクトドライブ・モーター」搭載やアルミニウムパイプのトーンアームなどを新開発しました。2層構造のプラッターは、剛性を高めるための強化リブを追加し、SL-1200MK6比で2倍以上の振動減衰特性を実現しました。また筐体には、BMC(バルク・モールディング・コンパウンド)シャーシとアルミダイカストシャーシを強固に一体化した2層構造を採用し、高い剛性を確保しました。さらに、着脱可能なAC入力端子、金メッキ加工を施したPHONO端子を採用し、純度の高い信号伝送を可能にしました。
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2019
SL-1200MK7-K- DJパフォーマンスの可能性を広げる新たな機能も搭載したモデル
- 新生TechnicsのHi-Fiオーディオ開発で培った技術により、DJターンテーブルとしての性能・機能を昇華したSL-1200MK7-K。ボタンレイアウトやプラッターの慣性質量などDJパフォーマンスに影響する仕様はSL-1200MKシリーズと同じ感覚で演奏できる操作性・レイアウトなので過去のモデルを使い慣れた方でも従来と同様の操作感で使用できます。高剛性筐体や高減衰インシュレーターなどの高音質化設計、「コアレス・ダイレクトドライブ・モーター」の搭載。ローター磁石の磁力を極限まで向上させ、SL-1200MK6を超えるトルク性能を実現しています。さらに、トルク・ブレーキスピードの調整や逆回転再生など、DJパフォーマンスの可能性を広げる新たな機能も搭載しました。尚、2021年には同機能でシルバー色のモデルも発売しています。
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2022
SL-1200GAE-K- SL-1200シリーズ発売50周年記念の受注限定生産モデル
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1972年発売の初号機SL-1200から2008年発売のSL-1200MK6まで、グローバル累計約350万台を出荷した、Technicsターンテーブルのダイレクトドライブ方式を代表するロングセラーモデルSL-1200シリーズ。
SL-1200GAE-Kは、SL-1200シリーズ発売50周年を記念した特別仕様のモデルです。2016年に世界1,200台限定で発売し高い支持を得たSL-1200GAE-Sをベースとし、SL-1200LTDなど、歴代の限定モデルと同様にブラックボディを採用。トーンアームにはゴールド塗装を施しました。トップパネルには限定モデルを表す「Limited Edition」の銘とシリアルナンバーを刻印したプレートを備えた受注限定生産モデルです。
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2022
SL-1200M7L- DJを生んだストリートカルチャーをイメージした7色展開の限定デザイン
- SL-1200シリーズは1972年の発売以来、ダイレクトドライブ方式ならではの高音質と信頼性で、クラブやスタジオ、放送局などにおいて高い評価を得てきました。1979年発売のSL-1200MK2以降は、ピッチコントローラーを上下にスライドさせる「フェーダー型」に変更するなど楽器を演奏するような操作性を実現し、ディスコやクラブにおける定番機となりました。SL-1200シリーズを愛するすべての方へ50年の感謝を込めてお届けする限定モデルが、SL-1200M7Lです。SL-1200MK7をベースにした特別仕様のモデルで、DJを生んだストリートカルチャーをイメージした7色の限定カラーを採用。トーンアームはゴールドカラーとしたほか、トップパネルには記念モデルを表す「50th Anniversary」の銘とシリアルナンバーを刻印したプレートを備え、ゴールドカラーロゴ入りのスリップマットなど、付属品も特別仕様とした限定モデルです。
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