クレメンス・トラウトマン×小川理子

クレメンス・トラウトマン

©Laurence Chaperon

クレメンス・トラウトマン
ドイツ・ブラウンシュヴァイク(Braunschweig)出身。ミュージシャンと法律家の両面の顔を持ちながら、2015年12月にドイツ・グラモフォンの社長に就任。クラリネット奏者としての顔を持ち、ニューヨーク・ジュリアード音楽院を卒業し、世界中での室内楽演奏を行った。実績としてリンカーン・センターの『モストリー・モーツァルト・フェスティバル』やベルリン・フィルハーモニー・ホールでの『ドイツラジオ・シリーズ』の出演、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭やジャーマン・ミュージック・カウンシルによる受賞歴がある。ドイツの音楽活動を支援する団体「Deutsche Stiftung Musikleben」の役員を務めると同時に同国の芸術(アート)を志す若者支援団体「Akademie der Künste Berlin」の共同設立者でもある。

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「音楽」の変わるコト、変わらないコト

クレメンス まず、私が考える「音楽の変わらないコト」の視点から思うことをお話しますね。変わらないのは、音楽コンテンツとテクノロジーが近い距離で相互関係を持ち、共に歩んでいくことだと思います。明らかに技術の進化は起こり、音楽の流行も変わっていくでしょう。それでも音楽は常にそれを表現し伝えていくカウンター・パートナーが必要です。この両者の関係は変わらないと思います。
パナソニックさんも来年100周年ですよね。ドイツ・グラモフォンも来年120周年を迎えます。お互い長い歴史を持つ会社ですが、ドイツ・グラモフォンの創設者であり蓄音機を発明したエミール・ベルリナーも最新の技術と音楽は共に歩み続けると考えていました。

小川 レーベルとオーディオ・メーカーの距離感はとても大切ですね。

クレメンス そのとおりです。昨年のベルリンのショーケースで演奏をお聴きしていますが、一人のミュージシャンとしての視点も含めて小川さんのお考えはどうですか。

小川 最近のオーディオ技術は急速に変化しています。特にストリーミング・サービスなどデジタルネットワーク分野においてですが、「変わっていくコト」としての技術やパートナーシップにおいては、パナソニックの具体的な取り組みとして今年1月から協業を開始したベルリン・フィルハーモニー管弦楽団とのコラボレーションがあります。この取り組みのポイントは、ベルリン・フィルのホール及び映像スタジオに4K・HDRに対応した放送用のカメラやミキサー、モニターを導入し、「デジタル・コンサート・ホール」というベルリン・フィルの演奏コンテンツの配信サービスの質的向上を図るものですが、もう一つのポイントにオーディオの研修プログラムがあります。

クレメンス それは興味深いプロジェクトですね。ドイツ・グラモフォンが1913年に最初にベルリン・フィルの最初の作品をリリースしたことはご存知ですか。それが完全な交響楽団の最初の作品でもありました。デジタル・コンサート・ホールはオーケストラにとって革新的なステップにあり、両社は共同で取り組んでいます。先ほどのお話はどういう内容でしょうか。

小川 トーン・マイスターのフランケさんにご指導いただき、テクニクスの若いエンジニアに指揮者の目指すものや譜面の解釈、アーティストの感性、ホールの雰囲気、スタッフのマネジメント、そして作曲家の思いなどあらゆる知識を学ばせてもらっています。コンテンツをお持ちの方々とハード・メーカーの緊密な関係、コミュニケーション、そしてお互いの信頼関係はとても重要だと思っています。

クレメンス 素晴らしい取り組みですね。

小川 「変わらないコト」は、個人的な意見ではありますが、音楽を作ることやスピリチュアルなメッセージを伝えていく演奏の力という行動の価値だと思います。だからこそ私たちはそういった貴重な音楽をお客様に届けられるように心がけています。

クレメンス 私もそう思います。そういった想いがないと、テクノロジーだけになってしまって音楽の核である人間性を失うことになりますから、非常に重要ですよね。

クレメンス・トラウトマン×小川理子

「音楽」の未来に向けてのゴール

小川 この3年間、Technicsはアナログ・デジタル両面において様々な再生方法に対応したベスト・サウンド・クオリティーを追求してきました。プレミアム・クラス、リファレンス・クラス、グランド・クラスなど様々な製品を展開し、この度リファレンス・クラスのターンテーブルSP-10を発表しました。
また、私たちは8月30日にAIスマート・スピーカーとGoogleさんとのコラボレーションを発表しました。AIテクノロジーは急速に成長してますよね。今回Googleさんと取り組むことになった理由は260以上のインターネット・ラジオをお持ちだったり、数々のストリーミング・サービスをお持ちだったからです。

クレメンス 私は音楽を聴く習慣やシチュエーションは今後さらに差別化されていくと思っています。旅行中や運動中、食事中などの音楽に発展して、ストリーミング・サービスによるムード重視の聴き方になっていくように感じます。レーベルとして色々な音楽の聴き方を求める音楽ファンに、レコードやストリーミング、ハイレゾといったトップ・クオリティー・ブランドとして様々なポートフォリオを提案していきたいと思っています。
もっと先の未来ではコンピューターが作曲をしているかもしれません。実際のところそれはすでに起こっています。時代が変わってもドイツ・グラモフォンは本物のアーティストにとってのホームであると共に、最新技術と連携し、ユニークでアイコニックな音楽を届けていきたいと思っています。

小川 音楽の未来を考えるとあらゆる可能性が拡がりますね。私たちがご一緒している方々とは、「イノベーター」の精神を共感しています。

クレメンス・トラウトマン×小川理子
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