Music & Me ~クリエイターが語る音楽と私~supported by Technics

さまざまなクリエイターに話を聞き、音楽と創作活動の分かちがたい関係を探る新企画「Music & Me ~クリエイターが語る音楽と私~supported by Technics」がスタート。第1回のゲストは、TOWA TEIやMETAFIVEなど、そうそうたるアーティストのジャケットを手がけている画家の五木田智央。彼はヘビーなレコード愛好家としても知られ、普段からTechnicsのターンテーブルを愛用しているという。「Technicsのインタビューということで即決しました」という五木田に「SL-1200MK7」でレコードを聴いてもらいつつ、これまでの音楽遍歴やレコードで音楽を聴く醍醐味などを語ってもらった。
取材・文 / 松永良平 撮影 / 須田卓馬

YMOで音楽の魅力に目覚める

ー 「レコードが好き」という感覚自体は子供の頃からあったんですか?

ありました。生まれて初めて買ってもらったレコードが「週刊少年ジャンプ」のレコード(1978年発売の「少年ジャンプ スーパー・サウンド・コミックス」)だったんですよ。連載マンガのテーマ曲とかドラマみたいなのが入ってたと思うんですけど。そのときからレコード盤はずっと好きですね。CDが出てきたときは寂しかったです。ちっちゃいし。

ー 初めて買ったのが「週刊少年ジャンプ」のレコードというのは興味深いですね。その頃からガジェット的というか、非音楽的な要素に惹かれていたのかもしれませんね。

そうですね。

ー では、今の自分につながるような、大きな影響を五木田さんに与えてくれたレコードってなんですか?

即答しますけど、YMOです。それ以前もアニメの歌とか聴いてましたけど、影響を与えられたというと、やっぱりYMOですね。5歳上の兄貴がYMOのレコード(1979年発売の「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」)を買ってきたんです。子供の頃は兄が買ってくるレコードを聴いてる感じでした。違う傾向の音楽を兄が聴いていたら、まったく違う趣味になってたと思います。

ー お兄さんはテクノやニューウェイブを当時聴いていたんですか?

そうですね。XTCやPop Group、This Heatとか、そういうのを兄貴がいっぱい買ってました。渡辺香津美さんがYMOにギターで参加してたんで、その流れでフュージョンも聴いてましたね。僕はそっち方面は面白くないなと思ってましたけど(笑)。兄貴がいないときに勝手にいろいろ聴いて、「このレコードは好き、こっちは嫌い」とかやってましたね。

ー 最高のライブラリーじゃないですか。

でしたね。だから変な話、同級生とは音楽の話がまったく合わなくて(笑)。兄貴とは同じ部屋だったんですけど、Talking Headsとかブライアン・イーノのポスターが貼ってあったんですよ。「このハゲのおじさん誰なの?」「ブライアン・イーノっていうんだよ」みたいな会話をしてましたね。

ー もちろん音楽的な面白さや刺激もあったと思うんですけど、今、名前が挙がったようなアーティストって、ジャケットなどビジュアル面のインパクトもすごかったですよね。

印象的なジャケットがいっぱいありますよね。

一時期浮気したけど、やっぱりTechnicsに

ー 五木田さんは、ずっとTechnicsユーザーなんですよね?

はい。仕事場のターンテーブルはSL-1200 MK3、自宅ではMK2を使ってます。もちろん小中学校の頃は、兄貴が持ってた、メーカーも覚えてないようなプレイヤーでレコードを聴いてましたけどね。自分でちゃんとレコードを聴くようになってからはTechnicsです。10数年前には浮気もしましたけど。

ー 浮気?

ビンテージのターンテーブルにハマっちゃって。でも、なんかダメで。やっぱりTechnicsに戻りました。

ー どういう流れでTechnicsユーザーになったんですか? 90年代はヒップホップDJたちの影響もあって、みんなSL-1200でレコードを聴いてましたよね。

僕も同じです。音楽好きな先輩にも「安いやつじゃなくて、ちょっと無理してでも、Technicsのプレイヤーを買ったほうがいいよ」って言われたし。実際、使いやすいですよね。デザインもこの形が自分の中で基本になっちゃってますね。SL-1200は世界に誇る名機だと思うんですよ。世界中どこに行っても置いてあるし。

ー 海外から日本に中古のSL-1200を探しにくる人たち、今でもいますからね。

みんな使ってますよね。

ー SL1200シリーズは、五木田さんがお好きなプロレスになぞらえると、“ストロングスタイル”みたいな雰囲気もあると思うんです。

ストロングスタイルですよ、かなり。

ー このアトリエを五木田さんは“道場”と呼ばれているそうですが、まさに“道場”で毎朝毎晩ストロングスタイルな音を楽しまれているわけですね。Technicsはターンテーブル界の新日本プロレスである、みたいな(笑)。

はははは。そうですね(笑)。

ー ではこのあたりで、本日用意していただいたレコードを「SL-1200MK7」で聴いていただきましょう。

五木田智央がSL-1200MK7で聴きたいアナログ5タイトル

【アラン・トゥーサン「The Bright Mississippi」】

うわ、いいスピーカーで聴くと、全然違いますね。

ー トゥーサンとしては晩年の作品で、ジョー・ヘンリーがプロデュースしています。「Southern Nights」など歌ものの印象も強い人ですけど、これはインスト作品なんですよね。

大好きですね。アラン・トゥーサンは歌い手としてより、ピアニストとして好きなんです。このアルバムはピーター・バラカンさんのラジオで知りました。いや、しかし今まで聴いてた音とは全然別モノですね。いろいろ試していいですか?

ー どうぞ。

【Yellow Magic Orchestra「Computer Game」】

このUS版12inchは、もともと音がいいんですよ。アル・シュミットが音をいじっているので、日本版とはちょっとミックスが違いますけど。(聴きながら)いいですね。当時、このレコードで黒人たちがディスコで踊っていたんですよね。面白いなあ。

【The Outlaws「Crazy Drums」】

ー 60年代イギリスのマッドなプロデューサー、ジョー・ミークのプロジェクトです。

これはヤバいかもしれないな。(流れた瞬間)うおー! ヤバい。

ー 60年代の曲なのにテクノっぽくすら聴こえますね。上中下で音が分離してシンセのパルス音みたい。

ジョー・ミークの存在が気になりますね、僕は。このシングルを買って、「こいつら、すげえ!」と思ってLPも買ったんですけど、そっちには「Crazy Drums」みたいな曲は入ってなくて、全然違いました。

【南有二とフルセイルズ「おんな占い」】

これは調布のレコード屋で100円で買ったレコードです。

ー 1970年リリースで、ムード音楽の世界では名曲と言われているそうです。

全然知らない人たちで、タイトルだけで買ったんですけどね。ノイズだらけだったんですけど、クリーナーで丁寧に拭いたら音がクリアになりました。レコードはそういう作業も楽しいんですよね。

【B.B.キング「16 Tons」】

ブルースとか、こっち系のリズム&ブルースも好きで、たまに聴きますね。空間がわかる録音というか。録音したハコの鳴りが自然に感じられる。インパルスのジャズとか、きれいな音質のレコードはもちろん好きなんですけど、ちょっと過剰なエコー感が苦手。僕はこういうナチュラルな鳴りが好きなんですよね。

ー 狭いスタジオで、1本か2本のマイクで録音したような。

そうそう。このMK7とスピーカーで試聴して、そういう環境で録った音なんだろうなということがよくわかりました。

レコードは温もりのある音だけじゃなくて凶暴な音も出る

ー 改めて、今回MK7を使ってみていかがでしたか?

普段使ってるMK3も好きですけど、これはこれで慣れたらすごく使いやすいんじゃないですかね。

Technics担当者 MK7はケーブルが着脱できるようになりましたのでそこが大きなポイントです。

そうか! それは魅力的ですね。

Technics担当者 もともとSL-1200はケーブルの着脱ができなくて。実は故障の原因のほとんどが断線であったり、ケーブル周りだったんですね。その対策のためにケーブルが差し替えられるようになっています。

なるほど。

ー あと78回転にもできるのでSP盤も聴けます。

聴けちゃうんだ。

ー 今回いろんなタイプのレコードで僕も感じましたけど、名機で聴くとそれぞれのレコードのポテンシャルが引き出されているのがよくわかりますね。レコードって「温もりのある音」とかよく言われますが、実際はもっといろんなタイプの音が入っているし、奥深い。そこが面白いんですよね。

単に「温もりのある音」みたいなところだけで語られると「違うよ!」って思っちゃいますね。「レコードってかなり凶暴な音も出るんだけど」みたいな(笑)。

PROFILE / 五木田智央(ゴキタトモオ)
1969年東京生まれ、同地を拠点に活動する画家。90年代後半に鉛筆、木炭やインクで紙に描いたドローイング作品で注目を浴び、2000年に作品集「ランジェリー・レスリング」を出版。ニューヨークでの展覧会を皮切りに、これまで国内外で多数の個展を開催している。近年では色彩豊かな作品を手がけ、抽象と具象の2分法を打ち破り、両者を継ぎ目なくつなぐことで、人々の心理を揺さぶる独自の実践を展開している。2012年にDIC川村記念美術館の「抽象と形態:何処までも顕れないもの」展に参加し、2014年同館にて個展「THE GREAT CIRCUS」、2018年4月東京オペラシティアートギャラリーにて個展「PEEKABOO」、2021年6月には、ダラス・コンテンポラリーにて個展「Get Down」を開催する。「シャッフル鉄道唱歌」(天然文庫刊 / 2010年)、「777」(888ブックス刊 / 2015年)、「Holy Cow」(タカ・イシイギャラリー刊 / 2017年)、「PEEKABOO」(公益財団法人 東京オペラシティ文化財団刊 / 2018年)、「MOO」(タカ・イシイギャラリー刊 / 2021年)、「Diary」(888ブックス刊 / 2022年)などの作品集、展覧会カタログを出版。
SL-1200MK7

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