Technics 「レコードの日」|「レコードとの出会いは冒険」安部勇磨(never young beach)が熱弁する、奥深く魅力的なアナログレコードの世界

世代を問わずレコードを愛する者たちが楽しみにしているイベント「レコードの日」が11月3日と27日に開催される。これを記念して、レコード愛好家の1人・安部勇磨(never young beach)を招いて、レコードとの出会い、レコードに対する思いなどを、ターンテーブル「SL-1200G」でソロ作品などを試聴しながら語ってもらった。


― 安部さんは1990年生まれなのでCD世代ですよね。家にレコードはありましたか?

うちにはありませんでした。周りには、両親が音楽好きでレコードが家にあった、という人もいますけどね。10代の頃に音楽を聴くようになったんですけど、ずっとCDで聴いてました。

― そんな中でレコードとはどんなふうに出会ったんですか?

友達から誕生日プレゼントにもらったんです。D.A.N.の櫻木大悟くんが「これ好きなんじゃない?」って細野(晴臣)さんの「泰安洋行」をくれて。細野さんの名前は知ってたんですけど、作品を聴いたのはそれが初めてでした。「泰安洋行」を聴くためにプレーヤーとか機材をそろえたんですけど、音楽も音像も今まで聴いたことがないものだったのでびっくりしました。

― 機材をそろえるのは大変だったのでは?

とにかく安くあげたかったので中古品店を回りました(笑)。機材に関する知識がまったくなかったので、プレーヤーとアンプが一緒になっているのと別なのは何が違うのかとか、どんなケーブルがいいのかとか、いろいろ調べながら店を回るのが大変だったけど、すごく楽しかったですね。

― 何かを始めるときってそうですよね。面倒なことも楽しくて、失敗してもいい思い出になる。すべてが冒険みたいな。

とにかく安くあげたかったので中古品店を回りました(笑)。機材に関する知識がまったくなかったので、プレーヤーとアンプが一緒になっているのと別なのは何が違うのかとか、どんなケーブルがいいのかとか、いろいろ調べながら店を回るのが大変だったけど、すごく楽しかったですね。

― 自分で最初に買ったレコードはなんだったんですか?

はっぴいえんどの「ゆでめん」(1stアルバム「はっぴいえんど」の通称)だったと思います。

― 細野さんからはっぴいえんどにさかのぼったわけですね。安部さんにとってレコードで聴く楽しみって、どんなところですか?

まず音ですね。音が温かい。CDだと音がきれいすぎる気がするんですよ。あと、レコードにまつわる機材ってデカいじゃないですか。それに重いし、壊れるし。でも、そこに愛着を感じるんですよ。

― レコード自体、CDに比べて大きいですもんね。

そうですよ。集めると場所を取るし。それが大変だって言う人もいるけど、僕はその場所を取るところが楽しくて。あと、レコードって傷とか埃で音が悪くなったりするじゃないですか。それも楽しいんですよ。予想外の出来事で音が変わるって、今の配信やCDでは味わえない経験で、それも冒険だと思うんです。レコードは音が悪くなったとしても、悪くなったなりのよさがある。ノイズの音も嫌いじゃないし。

― そういう視点で見るとレコードって生き物っぽいですよね。手間がかかるところも含めて。

最近の人間が作るものって、どんどん合理的になって手間を省くようになっている。でも、手間や無駄も大事だと思うんですよね。そういうものから気付かされることがいっぱいある。いいことも悪いことも予想できないことって、のちのち自分の糧になって創作に生かされるなって思います。例えばレコーディングって、音にこだわりすぎるとダメなんですよ。細かいことにこだわって雑味がなくなると面白くなくなる。今の世の中も細かいところを突きすぎて息苦しくなっている気がして。みんな「埃をとりたい!」と思っている時期なのかもしれないですけど。

― CDとレコードでは聴くときに気持ちのうえでの違いってあります?

全然違いますね。CDだとざっくり聴くんですけど、「この曲いいな、なんでいいんだろう?」と思ったらレコードを買って聴き直すんです。そうすると、CDとは違うものが伝わってくるんですよね。それを感じて、そういうものを自分でやってみようと思ったりして。

― レコードを聴くことが曲作りに反映されているんですね。

それはめちゃくちゃあります。CDだけ聴いてたら、今やっているような音楽には絶対ならなかったと思います。

― レコードは手間がかかる分、音楽に集中できるのかもしれないですね。ちゃんと音楽と向き合っている気持ちになるというか。ひさしぶりに聴くレコードは、古い友達に再会したような気がしますし。

確かにレコードってそういうところがありますね。そのレコードを買ったときのことを思い出したりして。友達と「このレコード、いくらで買ったの?」とか「それ見つかったんだ!」って話をするのも楽しい。そういうのはサブスクでは味わえないじゃないですか。友達の家に行くと、そいつがどんなレコードを出してくるか楽しみなんです。

― ちなみに安部さんは自宅ではどんな環境でレコードを聴いているんですか? オーディオにこだわりはあります?

オーディオは詳しい知人に話を聞いてそろえました。アンプはイギリス製のもので、スピーカーは70年代の陶器製のもの。性能はもちろんですけど、見た目も大事なんですよ。やっぱりカッコよくないと(笑)。

― わかります(笑)。ちなみに、レコードをよく聴くシチュエーションってありますか? 寝起きとか風呂上がりとか。

天気がいい日の昼下がりとかかなあ。最近、環境音楽をよく聴くんですけど、そういうのをレコードで聴きながら、「ああ、気持ちいいなあ」って。

― 極楽ですね(笑)。環境音楽にハマってるんですか?

コロナが始まってからソロアルバム(「Fantasia」)を出すまで、ずっとアンビエントな音楽を聴いてたんです。最近ではコンガの音だけ入ってるのとか、鳥の鳴き声だけ入ってるのとかをひたすら聴いてます。そういうシンプルなもののほうが、どんなマイクでどんな環境で録っているのか、音のことがよくわかる。それに心も浄化される気がして(笑)。それで最近では、どんどん音数が少ないものを聴くようになってますね。

― 歌詞やメロディがあると感情が動かされてしまいますが、環境音楽とかフィールドレコーディングものだとニュートラルな気持ちで音に接することができますよね。

そうなんですよ。音楽の研究というか勉強をしたいときは、そういうもののレコードを聴くようにしてます。

― では、研究の成果とも言える「Fantasia」のアナログをターンテーブル「SL-1200G」で聴いてみましょうか(「Fantasia」をかける)。

(イントロが始まったとたんに驚いて)うわあ、すごいですね! 迫力があるというか、空間が広いというか。自分の家で聴くのと全然印象が違う。その違いを具体的に言えなくて申し訳ないんですけど。

― アナログのカッティングに関してはこだわりがあったんですか?

いつもやっていただいている小鐵(徹)さんに全面的にお任せしました。小鐵さんの音が好きなので、小鐵さんが言うことなら右にならえって感じで。それ以前のミックスの段階では、いろいろお話させていただいたんですけどね。

― 「SL-1200G」を操作してみていかがでした?

昔から使ってるみたいに使いやすかったです。シンプルだけどカッコいいし、音もいい。オーディオでこんなに音が違うとは思いませんでした。今どんどんオーディオに対する興味が湧いてます(笑)。

― 新しい冒険が始まりそうですね。

朝起きたとき、こんな素敵なオーディオで好きなレコードを聴いて、ぼんやりできたら最高じゃないですか。僕の場合、車を買うより、こっちを買ったほうが絶対幸せになれますからね(笑)。

「レコードの日」概要
アナログレコードの魅力を伝えることを目的として2015年より毎年11月3日に開催されているアナログレコードの祭典。東洋化成が主催、Technicsが協賛している。イベント当日は全国各地のレコード店でさまざまなイベントが行われ、この日のために用意された豊富なラインナップのアナログ作品が販売される。
PROFILE / 安部勇磨(never young beach)
1990年東京生まれ。2014年に結成されたnever young beachのボーカル&ギター。2015年5月に1stアルバム「YASHINOKI HOUSE」を発表し、7月には「FUJI ROCK FESTIVAL '15」に初出演。2016年に2ndアルバム「fam fam」をリリースし、各地のフェスやライブイベントに参加した。2017年にSPEEDSTAR RECORDSよりメジャーデビューアルバム「A GOOD TIME」を発表。日本のみならず、上海、北京、成都、深セン、杭州、台北、ソウル、バンコクなどアジア圏内でライブ活動も行い、海外での活動の場を広げている。2021年6月に自身初となるソロアルバム「Fantasia」を自主レーベル・Thaian Recordsよりリリースした。
SL-1200G

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