「Technics×CIRCLE '22」特集

Technicsの移動式試聴ルーム・Technics Sound Trailerが、5月13~15日に福岡・マリンメッセ福岡 B館で開催された音楽フェス「CIRCLE '22」の会場を訪れました。

Technics Sound Trailerは上質な音楽体験を提供するべく、全国各地を旅しているトレーラールーム。この記事では、「CIRCLE '22」に出演したceroをTechnics Sound Trailerに招いて、レコードとの出会いや魅力、Technicsの完全ワイヤレスイヤホン「EAH-AZ60」を試してもらった感想を聞きました。

レコードとの出会い

ー ceroの皆さんが最初にレコードに触れたきっかけはなんだったんですか?

髙城晶平(Vo, Flute, G) 僕の場合、母親も父親もレコードで音楽を聴く人間だったからリスニングの環境が整っていたんですよ。両親がレコードプレーヤーを触っているのを見ていたから、なんとなくレコードの存在は子供の頃から知っていて。でも、実際に自分でレコードを買うようになるのはずっとあとで、高校生になるまでは「レコードは親の持ち物」という意識が強かった。だから自分で買い集めようとかそういうのはなかったですね。

ー 何がきっかけでレコードを集めるようになったんですか?

髙城 なんだったかな……。高校1年くらいの頃に、僕の世代で言うとくるりやサニーデイ・サービス、NUMBER GIRLの音楽に夢中になって。それとは別に親の持ち物として聴いていたはっぴいえんどや小坂忠さんの音楽が、その当時好きで聴いていた音楽にも通じてるらしいと何かのインタビューを読んで知ったんですよ。それで「親の持ち物的な音楽と、今自分が夢中になって聴いている音楽は地続きなんだ」と気付いたというか。そういうふうに思うようになってから、自発的にレコードを買うようになった気がする。

ー 荒内さんはいかがですか?

荒内佑(Key) 僕は中学生の頃にハードロックが好きでLed ZeppelinとかをCDでよく聴いていたんです。学校の登下校の途中に小さいリサイクルショップがあったんですけど、ある日その店の前にDeep Purpleの「Machine Head」のレコードが1枚だけ置いてあって。

髙城 あるある(笑)。そういうところによく置いてあるよね。

荒内 東京の中でも地方みたいなところで育って周りに文化的なものはほとんどなかったけど、登下校の途中で見かけるその1枚のレコードだけが自分の世界に通じている気がしたんです。それを買ったのが初めてレコードに触れたきっかけですね。

ー 今日は皆さんに「ご自身のバックグラウンドがわかるレコード」を1枚ずつ持参してもらっていて、荒内さんには「Machine Head」を持って来ていただきました。これはそのリサイクルショップで買ったものなんですか?

荒内 そうそう。学ラン姿で買いに行ったのを覚えてます。

ー いい話ですね。

荒内 いや、でもDeep Purpleは全然好きじゃないんですよ。

一同 (笑)。

髙城 え、それは昔から?(笑)

荒内 うん、昔からダサいなと思ってた。だから影響を受けたバンドで言うと、Led Zeppelinのほうが大きいですね。

髙城 Deep Purpleはジャケに惹かれたの?

荒内 ジャケというより、やっぱりその状況を特別に感じたからだね。大人になったらリサイクルショップにレコードが置いてあることはなんとも思わないけれど、狭い世界に生きている中学生にとって、通学路にロックの有名なレコードがポツンと置いてあるってだけで輝いて見えた。

ー 橋本さんはレコードを集めるようになったきっかけは覚えていますか?

橋本翼(G, Cho) 正直なところ、僕はレコードにあまり馴染みがないんです。所属レーベルのカクバリズムがレコードでもリリースするスタイルだったので、「レコードで出すんだ」と思うくらいで。

髙城 ceroが初めて出したのも10inch(2010年発売の「21世紀の日照りの都に雨が降る」)だったもんね。俺も当時は「CDじゃないんだ」と思ってたよ。

橋本 CDで育った世代だから、レコードにあまり触れてこなかったというのが本当のところです。

ー そうだったんですね。ceroというバンドのカラー的に、3人ともレコードが好きなのかなと勝手に想像していました。橋本さんはceroきっかけでレコードに触れたあと、初めにどの作品を買ったんですか?

橋本 ジャズが好きなので名盤と呼ばれる昔の作品から手を出した感じですね。あとはジャケットがデカいのが好きで、レコードで聴く頻度は少ないんだけど、買って満足しているところはあるかもしれないです。

楽曲制作時のこだわりを思い出した

ー 今は音楽の聴き方やフォーマットがたくさんあって、ゆったりとした時間の中で音楽をレコードで楽しむこともあれば、通勤時間や家事の最中などにはイヤホンを使うこともあると思います。皆さんにはTechnicsの完全ワイヤレスイヤホン「EAH-AZ60」を事前に試していただきましたがいかがでしたか?

髙城 さすがいい値段するだけある。俺が普段使ってるイヤホンとは全然違うなと思いました。

ー 普段からワイヤレスイヤホンは使われているんですか?

髙城 使いますよ。右と左が線でつながっているタイプと、EAH-AZ60と同じ左右が完全に分離してるタイプの両方を持ってます。どっちも全然安いやつだから当たり前かもしれないけど、今回試させてもらった「EAH-AZ60」のほうが断然音がよかった。

ー サウンド的な魅力というと?

髙城 僕は自分たちの曲をこれで聴いてみたんですよ。僕が普段使っているイヤホンと比べると、分離がいいからなのか、音の部品が粒立っていて無闇に音量を上げなくてすむから疲れを感じなかった。最近、年を取ってきたからなのか耳鳴りがすることがあって、イヤホンを使いすぎるのはヤバいのかなと思ってたところだったんですよ。でも、普通にいいものを使えば音量をあまり上げなくても音楽を楽しむことができるんだと気付かされました。

ー ちなみに自分の音源を聴くとなると、そのジャッジも厳しくなりませんでした?

髙城 確かに、制作の過程を知ってるからね(笑)。これを試して思ったのは、特に僕みたいに安物のイヤホンで音楽を聴いていると、音楽というものを時間の展開で「こう来たか」みたいなふうにしか批評できなくなるというか。楽曲の一連の流れだけを追って「A、B、Cがあって、こう来たか。なるほど」みたいな喜びだけに集約されてしまうんじゃないかと思っていたんです。でも、作り手は「あえてこの音は右に振ろう」とか「ここにこの音を忍ばせておこう」とか、空間のデザインもしているわけじゃないですか。そういう遠近感や空間のデザインみたいなものって、安価な音響で聴いていると同一線上にしかならないというか二次元的になっちゃう。安くて便利なのはいいことなんだけど、そういうところを評価する耳はなくなっちゃうよなと、ぼんやり考えてました。

ー なるほど。ちなみに「EAH-AZ60」で聴くceroの音楽はどうでした? 髙城さんが聴いてほしい音は鳴っていましたか?

髙城 うん。すげえいい曲だなと思ったし(笑)、聴いていて「そういえばこんなふうに作ってたな」とか思い出しました。自分たちが作った楽曲でもリリースして2ミックスの世界に行っちゃうと、制作時のこだわりみたいなものは徐々に忘れちゃうんですよね。でも、今回「EAH-AZ60」を使ってみて「こういう空間作りをしてたんだよな」とか当時の記憶がよみがえってきて。

ー 橋本さんはどうですか?

橋本 僕は髙城くんとは逆で、音がよかったからどんどん音量を上げてみたんですよ。それでどこまでが破綻しないバランスなのかなと試してみたんですけど、大きい音でも問題なく聴けました。僕も普段はワイヤレスイヤホンを使っていて、それは好みの音なので気に入っているんですけど、だいたい新しいものに手を出したときに落ち込むことが多いんですよ。いい音なのかもしれないけど、好きじゃないということが多くて。でも、今回試させてもらった「EAH-AZ60」の音は個人的に好きだし、みんなも好きなんじゃないかなと思いました。フラットというか、変に味付けしてない感じがいいですね。

ー ceroの楽曲は聴かれました?

橋本 ceroは聴いてないんですけど、自分のソロの音源を聴いたら、音質がよすぎてミックスをやり直したくなり、ちょっと落ち込みました(笑)。

ー 荒内さんは普段、ワイヤレスイヤホンは使いますか?

荒内 いえ、初めて使いました。僕は基本的にワイヤレスというものを信用していないので(笑)

ー 有線派とワイヤレス派で意見が分かれることも少なくないですからね。そんな有線派の荒内さんから見て、今回試してもらった「EAH-AZ60」はどうでした?

荒内 全然問題なかったです。僕のワイヤレスイヤホンに対しての懐疑的な気持ちは思い込みだったんだなと。サウンドに関しては、どこかの帯域が強調されすぎていないというか、誠実な音だなという印象を受けました。

ceroが考えるアナログレコードの面白さ

ー 今はレコードブームだと言われていますけど、まだまだハードルが高いと感じている若い人もいると思うんです。皆さんがそういった人たちにレコードの楽しさを伝えるとしたら?

荒内 個人的な話になりますけど、今まで音楽をレコードで聴く頻度ってそんなに多くなかったのが、この1カ月くらいはレコードでしか聴いてなくて。というのも、現代音楽や昔の電子音楽はサブスクで聴くといつ始まっていつ終わったのかがわからなかったりするんですよ。だからレコードのようにA面、B面で区切られているだけでも、すごく音楽と向き合いやすくなる。そう気付いてから僕はレコードばかり聴いているから、そういうよさもあるよなと思いますね。あとは寝る前にAmazon Prime VideoやNetflixでドラマを1本観るみたいに、レコードを1枚を聴いてみるのも面白いかなと。日常生活の中でじっくり音楽を聴くタイミングって実はあまりないと思うので。

髙城 別のインタビューで似たようなことを言っちゃったからあれなんですけど、少し前にDJをする機会があって、レコードを何枚か持って行こうと思って家でいろいろ聴いていたときに、最近聴いてなかったやつをかけてみたら音がすごく悪かったんですよ。それはホコリやカビが原因だと思うんだけど、クリーナーを使ってキレイにしてみたら、見違えるような音が鳴るんですよね。磨いたら音がよくなるなんて、サブスクじゃ絶対にありえないことじゃないですか。そういうふうにさ、自分がその音響に直接的に関われるメディアってレコード以外に何気にないんですよね。手をかけてやれば生き返るメディアって弱いようで強い。手入れをしないと弱くなっちゃうけど、そういうふうに復活させる術がいくつか用意されているというか。アナログってそういうものだと思うんだけど、その延長線上に機材とかもあって、揉めるというか自分で関わっていけるというのがレコード以外にないよなって改めて思いました。だから今の若い子にはそういう部分も知ってもらえたらいいかな。

ー 最後は橋本さんに締めていただければと思います。

橋本 ひと言で言うとそういう時間を作れる装置ってことですかね。だって最近はそんなにちゃんと音楽を聴くことってないと思うんですよ。

髙城 うん。時間を取って聴くということ自体がね。

橋本 そうそう。TikTokとか見てるとどんどん尺が短くなってるじゃないですか。どこかで戻ってくることもあるだろうとは思うけど、そこは自由に楽しむのがいいから「レコードは音がいいから聴きなよ」みたいな説得は無理やりかもしれない。だから質問の答えになってないかもしれないけど、このトレーラーがいろんな公園とかに行って、フードカーの並びにあったら面白いですよね。そしたら普段レコードに接してない若者や、小さい子供にも何かを感じてもらえるかもしれないし。

髙城 子供はターンテーブルみたいな動く機械が好きだからね。

橋本 うん。小さい頃にそういう体験をしたら音楽に興味を持つきっかけになるかもしれない。

荒内 このトレーラーでレコードも貸し出しできたらいいよね。移動図書館みたいな感じで。

髙城 あー、それも面白いね。

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PROFILE / cero
2004年に髙城晶平(Vo, G, Flute)、荒内佑(Key)、柳智之(Dr)の3人により結成されたバンド。2006年には橋本翼(G, Cho)が加入し4人編成となった。2007年にはその音楽性に興味を持った鈴木慶一(ムーンライダーズ)がプロデュースを手がけ、翌2008年には坂本龍一のレーベル・commmonsより発売されたコンピレーションアルバム「細野晴臣 STRANGE SONG BOOK-Tribute to Haruomi Hosono 2-」への参加を果たす。2011年にはカクバリズムより1stアルバム「WORLD RECORD」を発表。アルバム発売後、柳が絵描きとしての活動に専念するため脱退し3人編成になった。2015年5月に3rdアルバム「Obscure Ride」、2018年5月に4thアルバム「POLY LIFE MULTI SOUL」をリリース。2022年1月には1stアルバム「WORLD RECORD」の発売10周年を記念し、既発アルバム4枚のアナログ盤を再発した。最新曲は同年6月配信の「Fuha」。また6月から7月にかけては約2年3カ月ぶりとなる全国ツアー「TREK」を開催する。
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