- 株式会社セガゲームスのサウンドディレクター。1993年に当時のセガ・エンタープライゼスに入社し、主に「ソニック」シリーズなどの家庭用ゲームタイトル向けの楽曲制作に携わる。1998年にリリースされた「ソニックアドベンチャー」の開発にはサウンドディレクター、リードコンポーザーとして関わり、数多くのボーカルソングを制作した。その後、同ゲームのメインテーマ曲「Open Your Heart」を歌唱したジョニー・ジョエリとユニットを結成し、ギタリストとして活動。Crush 40という名義で数多くのゲーム音楽やオリジナル曲を制作する傍ら、「東京ゲームショウ」をはじめとしたイベントへの出演も果たす。また「ソニック」シリーズ25周年となった2016年からは「ソニックアドベンチャー」シリーズのインスト曲を演奏するトリオ編成のバンド・SONIC ADVENTURE MUSIC EXPERIENCEの一員としてもステージに立っている。2018年1月には自身が音楽を手がけた「ソニックアドベンチャー」「ソニックアドベンチャー2」の音楽を集めたアナログ盤を同時リリースした。
- SONIC CHANNEL 瀬上純 Twitter
- ミキサーズラボ・ワーナーミュージックマスタリングのエンジニア。1979年にワーナーパイオニアに入社。山下達郎、中森明菜、クラムボンなど数多くのアーティストのマスタリングを手がけている。2017年5月にミキサーズラボのスタジオにカッティングマシンを導入。CDマスタリングやハイレゾマスタリングといった業務だけでなく、アナログ制作の業務も請け負っている。
- MIXER'S LAB
ドリームキャスト用のゲームソフトとして発売された「ソニックアドベンチャー」(1998年)および「ソニックアドベンチャー2」(2001年)の音楽を集めたアナログレコード盤「SONIC ADVENTURE OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」「SONIC ADVENTURE 2 OFFICIAL SOUNDTRACK VINYL EDITION」が同時リリースされました。
今作の発売を記念して、長年「ソニック」シリーズの音楽に関わってきた瀬上純さんと、「ソニックアドベンチャー」シリーズの音楽のマスタリングおよび、アナログ盤のマスタリングを担当した菊地功さんの2人に、東京・有明にあるパナソニックセンター東京の「テクニクス リスニングルーム」にお越しいただき、アナログ盤の試聴の感想や、アナログレコードに対する思いを聞きました。
― まずはリスニングルームで今作を試聴した感想を伺えればと思います。
瀬上 すごい部屋ですね。驚きました。パーカションの音、ボーカルの声、どれも鮮明に聞こえるし、かと言ってどれか1つの音がうるさすぎたりしない。
菊地 音のバランスがすごくいいですね。高音がキツくないし、低音も出すぎていない。中域の音もすごく整理されているので聴きやすかった。
瀬上 贅沢な空間で聴かせてもらって光栄です。「いつかリスニングルームを持ちたい」とは常々思ってますけど、さすがにこれだけの環境を整えるにはそれなりに大変ですから……こういう空間が家にあったらなあ(笑)。
― アナログ盤を作るにあたってこだわったところはどこでしょうか?
瀬上 作品としてレコードを手がける機会は、そう何度もあることではないと思うから、今回はやりたいことをすべて詰め込みました。ブックレットも丁寧に作り込んでいます。中には「このサントラはCDで既に持ってるよ」っていう人もいるかもしれないんですけど、今回の「VINYL EDITION」ではアナログ用にマスタリングをし直して、これまで出ていた音とは違うものに仕上がっています。これは一重に菊地さんのお陰ですね。
菊地 僕としても長年やってきたシリーズの曲をアナログ用にマスタリングできるなんて思ってなかったから、貴重な体験でした。
瀬上 以前サントラを買った人でも手が伸びるアイテムになったという自負があります。中にはアナログのプレイヤーを持っていないって人もいると思うから、今回の新しいマスタリング音源をデジタルファイルとしてダウンロードできるコードも付いてますし、やっぱりレコードはジャケットを含め、そのサイズ感がいいので飾るアイテムとしても魅力的だと思います。まあ本音を言えばやっぱり針を落として音楽を楽しんでもらえるのが一番ですね。
― この作品で初めてアナログ盤を手に取るリスナーも多いと思います。
瀬上 アナログってハッキリ言ってしまえば手間のかかるメディア、めんどくさいメディアなんです。埃が付いていればスプレーしてちゃんと拭き上げなきゃいけないし、ちょっと聴き飽きたからって手軽に次の曲に飛ばすこともできない。でも「音楽と向き合う」って意味ではこれ以上最適なメディアはないと思っています。
― それはなぜでしょうか?
瀬上 ずっとかけっぱなしにはできないから、針を置いてある程度時間が経ったら針を置き直したりしなきゃいけない。ちゃんと近くにいてA面ならA面、B面ならB面のストーリーと向き合うことになると思うから、“ながら聴き”にならないんですよね。聴いてる間はジャケットを眺めたり、ライナーノーツを読んだりしながら音楽を堪能するんです。菊地さんは今でもレコードを日常的に聴いてるんですか?
菊地 うん。会社が会社だし、休みの日なんかはもっぱらレコードをかけてますね。何千枚っていうレコードがあるわけだし、今の仕事にもつながってくると言うか。「あのときの音、どんな感じだったっけな」と思って聴くことも多いです。
瀬上 僕は童心に帰りたくなるときとか、初心に帰りたいときにはレコードを聴くようにしてるんですけど、日常的には触れていないんですよね。「これではいかんな」と思っています(苦笑)。
菊地 僕の家で使ってるアンプはTechnicsさんのものなんですよ。確かSU-3200。もう40年ぐらい前に買ったやつだと思うんだけど、それでもまだ直し直し使ってます。
瀬上 僕も今日、リスニングルームで音を堪能させてもらって、家でもレコードをかけたくなりました。
菊地 僕はマスタリングが専門だけど、そのうちカッティングもやりたいなと思ってるんですよ。
瀬上 へえ!
菊地 勤め始めたばかりの頃にレコードのカッティングの立会いとかをしてて、いつからかCDや配信の仕事ばかりになってしまたけど、こうしてまたレコードを作れる環境が整ったから。うちのスタジオでやってもらってるカッティングエンジニアにいろいろ教わろうかと思って。
瀬上 それはいいですね! もし機会があればまたアナログ盤を作りたいので、そのときはぜひよろしくお願いします。