- 2006年より活動を開始。迫力あるライブパフォーマンスは、造り込まれた楽曲と確かなテクニックに裏打ちされている。2009年3月に、須永辰緒主宰レーベル”DISC MINOR”からアナログシングル「TRI4TH plus EP」でデビュー。以降「Club Jazz Digs Lupin The 3rd 」「NOT JAZZ!! BUT PE’Z!!! 」他、多数のコンピレーション・トリビュートアルバムに参加。Remixも多く手がける。2009年11月には、脚本・三谷幸喜、音楽監督・小西康陽ミュージカル「TALK LIKE SINGING」に出演、東京・ニューヨーク公演に参加する等、幅広い活動を展開する。2010年8月、プロデューサーに須永辰緒、ゲストにJukka Eskola、Max Ionataを迎え、1st アルバム「TRI4TH」リリース。2011年7月、i-tunesよりOCTET Sunaga t『キエフの空 feat.Jukka Eskola-TRI4TH』 をリリース。2011年11月には初のカバーアルバム「わらべJAZZ」をリリースする。2012年8月に新ピアニスト 竹内大輔を迎え、2nd アルバム 「TRI4TH AHEAD」をリリース。TRI4TH流”踊れるジャズ”を展開。渋谷Duoにてワンマンライブを成功させる。2013年11月、TRI4TH初のセルフプロデュースによる3rd アルバム「Five Color Elements」をリリース。2014年、日本を代表するバイオリニスト、金原千恵子の代表曲を須永辰緒が生演奏によるJAZZリミックス「Sunaga t experience DIGS CHIEKO KINBARA~ CHIEKO KINBARA JAZZ REMIXIES」に演奏、アレンジで参加する。2015年、Playwrightレーベルに移籍。10月、4th アルバム「AWAKENING」をリリース。2016年 4月、ベストアルバム「MEANING」をリリース。9月、5thアルバム「Defying」をリリース。
TRI4TH OFFICIAL WEBSITE
テクニクスでは、ダイレクトドライブターンテーブルシステム「SL-1200G」の購入者にオリジナルレコードをプレゼントするキャンペーンを実施しました(応募終了済)。今回のキャンペーンでプレゼントされるオリジナルレコードには、新たなジャズの波を感じさせる4組の日本人アーティストの楽曲が収録されています。
今回登場していただくのは、昨年結成10周年を迎えたTRI4TH(トライフォース)から、リーダーの伊藤隆郎(dr)、織田祐亮(tp)、藤田淳之介(ts)の3名。パンクやクラシックなど、それぞれの出自を持ったメンバーが、どのように「ジャズ」を軸としたバンドの音楽性を確立して行ったのか。アナログレコードでのデビューから、現在の所属レーベルplaywrightへの移籍、そして最新作『Defying』へと至る道のりをお伺いしました。
― TRI4THはデビュー作をはじめとして定期的にアナログで作品を発表されていますが、普段からよくレコードを聴かれていますか?
織田 一番最初にアナログプレイヤーを買ったのは高校生のときで、7インチ用のポータブルプレイヤーでした。当時は渋谷系の大ファンで、NHK-FMの「ミュージック・パイロット」という番組でカヒミ・カリィさんがよく7インチをかけていて、自分でも買ってみたいと思って。それから少しアナログを聴かない時期もあったんですけど、TRI4THを始めて、須永辰緒さんと出会うことができて、そのつながりで小西康陽さんとも出会えたり、レコードに精通してる方と関わらせていただくことが増えたのもあって、2008年くらいにTechnicsのSL-1200MK2を買って、そこからまたよく聴くようになりました。仕事ではデータで音源をやり取りするので、MP3で聴くことが多いんですけど、「今日は休みだからご飯を作りながら音楽かけよう」みたいなときはレコードをかけることが多いですね。
― 今回のキャンペーンはプレイヤーを買ったら、応募者全員にレコードをプレゼントするというものなのですが、アナログの盛り上がりを感じていますか?
織田 すごく感じますね。去年(2015年)驚いたのが、アイドルの方が7インチのレコードを出してたりするってことで、僕が参加させていただいた例でいうと、元AKB48の星野みちるさんが小西康陽さんプロデュースで『夏なんだし』っていう、はっぴいえんどの『夏なんです』のパロディーみたいな曲を出していて、CDの購入特典が7インチだったんです。それってすごく贅沢な話で、多少値段が上がっても、そういうのを欲しいと思う人はたくさんいると思うんですよね。デアゴスティーニがアナログレコード付きのマガジンを出してたり、そういうところでも盛り上がりを感じます。
伊藤 前に宇都宮にあるスノーキーレコーズっていう昔からあるレコード屋さんでライブをする機会があって、そのときはレゲエとかスカをやったんですけど、そういう音楽ってレコードでしかないんですよね。スカタライツとかって、もちろんCDにもなってるんだけど、7インチでしか聴けないバージョンもすごくあって、それって夢があるなって。
― Apple MusicやSpotifyのようなストリーミングでは聴けない音源が、アナログにはたくさんありますもんね。キャンペーン用の音源には「Sand Castle」が収録されていますが、この曲はバンドにとってどんな一曲だと言えますか?
織田 一番新しい『Defying』というアルバムの一曲目に入っている曲で、TRI4THでは初めて隆郎さんが作曲をした曲です。今回のアルバムは「ロック」がひとつのキーワードになっていたので、もともとロックバンドをやっていた隆郎さん発信で曲を作ったら、面白いことになるんじゃないかと思って、実際そういう曲になったので、『Defying』の中で一番大事な曲ですね。
伊藤 良くも悪くも、すごくシンプルな曲です(笑)。これまでは複雑なコードの曲が多かったんですけど、僕は作曲のスキルが高いわけではないので、必然的にシンプルになっちゃったっていうのもありつつ、制約のない自由な構成の中で、一人一人に圧倒的な個性を発揮してほしかったんです。シンプルにすることで、みんなの魅力を詰め込んで、それを一曲目にしたかったんですよね。
― イントロのフィードバックノイズはエレキギターのようにも聴こえますが、ウッドベースの音だそうですね。
伊藤 あれは思いつきというか、偶然リハスタでハウリングが鳴って、「それいいじゃん」って(笑)。「ジャズとされる音楽で、フィードバックから始まるアルバムってないんじゃねえの?」っていう、面白いことはとにかくどんどんトライしてみたかったので、せっかくだからそれを一曲目にしようっていう。
― では、実際にTechnicsのオーディオシステムで聴いてみましょうか(「Sand Castle」を試聴)。
織田 めちゃくちゃいい音ですね。ドラムの皮が震えてる感じまで伝わるというか、倍音までそのまま聴こえてくる。
伊藤 立体感がすごいですね。目を閉じて聴いてると、ホントにそこでドラムを叩いてるような再現度というか、奥行きを感じられて、びっくりしました。
― 今日お持ちいただいた他のレコードも聴いてみましょう(2009年発表のデビュー作『TRI4TH plus EP』、2011年に発表したMUTE BEATのカバー『キエフの空』、メンバーがレコーディングに参加した浜田マロンの2016年作『季節巡れど jazz ver.』)。SL-1200Gに針を落とす。
織田 いやあ……ずっと聴いていたいですね(笑)。
藤田 こうやって聴くと、CD屋さんに置いてあるスピーカーももっとよくしてほしいと思っちゃいます(笑)。お店でかけていただけるのはすごくありがたいんですけど、「あれ、何か違う…」って思うことも正直あるんですよね。やっぱり、いい環境で聴くのって贅沢だなって。
織田 今聴かせていただいた3枚は、録音環境も様々で、良し悪しありますけど、どれも上質に聴こえますね。
伊藤 確かに、聴く環境がいいと、どれもめっちゃいいレコスタで録ったような気持ちになるね(笑)。
― やっぱり、TRI4THはファンの方からよく「アナログで出してほしい」と言われますか?
伊藤 そうですね。もともとがアナログデビューということもあって、そういうのが好きなリスナーが最初から応援してくれているので、「次のはいつアナログにしてくれるの?」っていう声はよく聞きますね。
織田 7インチとかって、圧倒的なパッケージの魅力があるじゃないですか?若い世代にもっとハードが広まったら、きっとレコードを欲しいと思う人はたくさんいると思うので、今回みたいなキャンペーンはすごく大事なんじゃないかって思います。
藤田 音楽と文化は密接な関係があるというか、技術の進歩と相まったときの力ってものすごいと思うんです。僕らは音楽を作って演奏する側ですけど、何かムーブメントを起こせないかと思ってやってる部分もあるので、アナログとかを通じて、何か世のなかをくすぐるようなことができたら面白いなって思いますね。僕昔作曲をオーディオのコンポでやってて、でもトラックをいっぱい聴かなきゃいけないから、すっきり聴けるモニタリング用のモニターに変えたんですけど、音を聴くのが楽しくなくて、創作意欲がガクッと落ちたんです。やっぱり、心が踊らないとやる気が起きない。それは改めての発見で、自分たちの音楽を通して、聴く人も自分を上げられるような、そういう可能性を提示して行きたいと思います。
― それでは、ここからはTRI4THの2016年の活動を振り返っていただきたいと思います。結成10周年イヤーで、リリースもツアーも盛り沢山な一年でしたね。
伊藤 playwrightに移籍して、今年(2016年)は4月にベストアルバム、9月に『Defying』を出して、その合間を縫うように全国各地を回って、気づいたらもう今日だったっていう(笑)、すごく慌ただしい、怒涛の一年でしたね。
織田 10年目の年が今までで一番充実していたっていうのは、ホントにありがたいことですね。今が一番フレッシュな状態だし、きっと来年はさらにフレッシュになってる自分たちが想像できるので、そうやって10周年を終われるのはすごく幸せです。なので、今年は「10歳の誕生日」くらいの感覚で、「これからまだまだよくなる」っていう自信があります。
藤田 僕らはメンバーそれぞれがクラシックだったり、パンクだったり、いろんなことをしてきたメンバーが集まって結成されたので、試行錯誤の時間がすごく長かったんですけど、10年目が見えてきた中で、「このままじゃヤバい」っていうのもあって、この一年で一気にみんなの想いが重なったっていう実感があります。
― 『Defying』というアルバムは、バンドにとってどんな作品になりましたか?
伊藤 三部作を締め括る勢いのある作品というか、今までやってこなかったパワフルな感じを意識的に詰め込んで、今までで一番振り切れた作品になりました。これまでは一枚のアルバムの中にいろんなバリエーションの曲を混在させて、曲調の違いで物語を作っていくみたいな形で作ってたんですけど、今回はあえて一つのポイントで狙い打ったというか、自分たちのイメージを新たに構築したかったんです。
― その「新たなイメージ」というのは?
伊藤 途中で話にも出たように、メンバーの中にはクラシックを勉強していた人もいて、音色を大事にするっていうのが根本にあったから、これまでは座って聴くようなイメージだったんですけど、去年の『AWAKENING』以降はよりパワフルになって、ジャズのリスナーはもちろん、ロックのリスナーにも聴いてもらえるような音を提案してきたんです。なので、ライブもスタンディングでずっとやらせてもらって、高校生くらいの若い人にも届くような作品になったらなって。
― 「ジャズは難しい」と思っているような若い人にも届けたかったと。
伊藤 僕もTRI4THをやることでジャズを勉強してきたというか、結成当時は自分自身ジャズ初心者で、リスナーのことまで考える余裕がなかったんです。でも、須永辰緒さんが僕らを見出してくれて、そこからバンドの歴史が動き出して、徐々にジャズプレイヤーとしての自負も強くなってきた中で、どうやったら今のジャズをもっとたくさんの人に聴いてもらえるんだろうって考えるようになってきたんです。そういう中で、今のスタイルに辿り着いたという感じですね。
― 実際、お客さんの雰囲気は変わってきましたか?
藤田 変わりましたね。前はライブが始まっても、「シーッ」って感じで、ソロで初めて盛り上がる感じだったけど、今は出て行くとすぐ大きな拍手が起こるし、こっちが手を上げたら、お客さんもウワーってなってくれる。この一年で急激にそうなっていきました。
伊藤 もちろん、この一年かけて少しずつ慣らしていったようなところもあります。
― 確かに、『Defying』はロック的な勢いがありつつ、音色の美しさもちゃんと残ってますもんね。
織田 『AWAKENING』から惜しげもなくロックの要素を放り込めたのは、隆郎さんがロックバンドをやってきたっていうバックボーンがあるからなんですよね。以前は「ジャズの作品を作りましょう」みたいな感じだったけど、今年出したアルバムに関しては、それぞれが今まで培ってきたバックボーンを「集まれ!」って感じ(笑)。例えば、僕と藤田くんは音大でクラシックを勉強してきたから、激しい曲をやってる中でも、管楽器の音色の美しさはどのバンドより出せてる自負がある。それぞれのバックボーンを持つメンバーが、ここに来てひとところに集まってきた感じがあって、やっと「これがTRI4THです」っていう形で世の中にアルバムを出すことができたんじゃないかと思います。
― 今の話は現代のジャズシーンの動きともリンクする話というか、今回のキャンペーンは「Brand New Jazz」と題されているわけですが、「ジャンルの垣根がなくなってきた」ということが、新たなジャズシーンの面白さだと言えると思うんですね。
伊藤 僕らがplaywrightに参加するきっかけになったのは、2年前(2014年)に出た『Family』というコンピレーションアルバムで「チュニジアの夜」をカバーしたのが最初なんですけど、今はもうあの頃とも全然状況が違って、20代の若いバンドがすごく増えてるんですよね。彼らのジャズと僕らのやってるジャズは違うんだけど、リスナーからするとそうやっていろんなジャズが混在してる状況が面白いと思うんです。ピアノトリオもいればビッグバンドもいるし、僕らみたいにロック寄りのバンドもいれば、アシッドジャズを生演奏で再現するようなバンドもいる。世代を問わずそういうバンドがいて、シーンが動いてる感じはすごくしますね。その上で、「雑食性」という部分は僕らも若いバンドも共通して持っている気がして、そこはすごく頼もしいし、刺激にもなります。
藤田 「面白いもの作ったろう!」みたいな空気はすごく感じますね。僕らもジャズを聴いてる人だけに聴いてもらおうとは思ってなくて、心に訴えるというか、ズドンと来るやつを投げてやろうと思ってるんです。今ってジャズのコーナーに置いてあっても、「これヒップホップじゃねえ?」とか「これポップスじゃねえ?」って感じで、ジャンルが崩壊してる……とまでは言わないですけど(笑)、広がりがものすごいから、お客さんからすると「何を持ってジャズか」っていうのはわからなくなってるかもしれない。ただ、「アドリブをするのがジャズ」だとか定義があるとしたら、その部分は自分たちが引き受けるから、聴く人は自由に聴いてくださいって感じですね。
伊藤 例えば、高校生くらいでジャズに興味を持っても、ジャズバーとかってすぐには行けないじゃないですか? 僕自身がそうで、当時はライブハウスでジャズをやってるバンドもいなかったし、聴きたくても聴ける場所がなかった。なので、今僕らがライブハウスのようにフラッと行ける場所でライブをやることで、若い人がジャズに興味を持つきっかけになれたらなっていうのは思うんです。重たい扉を開けて知らない音楽を聴くのって勇気が要るから、そこの間口をもっと広げたいですね。
藤田 昔は「ジャズを学ぶ」っていう感覚が強くて、ライブでは「学んだものをいかに出せるか」っていうことが重くのしかかってたんですけど、今はどれだけお客さんが楽しめるかっていうことが大事で、そこを追求することで、お客さんに夢を見てほしいんです。「TRI4THは次どんなことをやってくれるんだろう?」って想像することで、生活がちょっと楽しくなったり、そうやっていろんなことがいい風に回っていくための存在になれたらいいなって。そのためにも、今後も熱量を持って続けて行きたいですね。