「機器本来の性能で
お客様にサウンドを楽しめる環境をお届けしたい」

オリジナルオーディオボード

音作りのコラボレーション

TAOCとの共同開発で生まれたSC-C70、SC-C50専用オーディオボード。手軽に使える製品にこうした音質アクセサリーを用意するのは珍しい。そんな専用オーディオボードを開発するきっかけや、TAOCとの共同開発をした経緯、そして開発の苦労などをインタビュー。SC-C70、SC-C50の優れた音質をさまざまな場所で最大限に引き出すことのできる専用オーディオボードの秘密を詳しく紹介する。

TAOC 廣瀬氏

アイシン高丘エンジニアリング株式会社
TAOC部
廣瀬新吾

TAOCブランドの立ち上げに携わり、現在はTAOC事業における事業運営全般の管理を担当。技術畑を歩んできたため、特に製品の設計・開発に軸足を置いた活動をしている。

TAOC 南氏

アイシン高丘エンジニアリング株式会社
TAOC部
南祐輔

TAOCの製品開発プロセスにおける製図を担当。製図技術者として図面からTOACの音作りを支える。また、国内外ユーザーへの製品サポートも担当している。

Panasonic 湯浅氏

パナソニック株式会社
アプライアンス社
湯浅孝文

テクニクス製品の開発で音響部門を担当。スピーカーに関する技術・音響設計の経験を活かして、新製品の特長となる技術を考案し、最適な音作りを行い商品化する業務を担当している。

オリジナルオーディオボード開発のきっかけは?

湯浅
SC-C70の商品開発の段階で、我々はお客様がより良い音で楽しめるものを用意したいと考えはじめました。そこで、SC-C70を置くためのオーディオボードを作れないかとTAOCさんに相談して開発が始まりました。

廣瀬
アイシン高丘では鋳造技術でパナソニックさんの家電で使用される部品を30年ほど前から製造しておりました。私自身も海外の生産拠点へ出向いた経験もあり、以前からお付き合いはありました。そこにSC-C70専用のオーディオボードの開発のお話をいただけたことは、TAOCとしても光栄です。

湯浅
SC-C70は一体型システムですから、リビングなどのさまざまな場所に置かれることもあります。オーディオ用ではないあまり強度の高くないテーブルや棚に置かれる場合もあるでしょう。高級オーディオ機器の場合はユーザーの方が自発的にオーディオボードなどのアクセサリーを使用しますが、SC-C70やSC-C50をお求めになるユーザー層ではそこまでは考えない人もいます。ですので、テクニクスとして専用のオーディオボードを用意すれば、多くのお客様がより良い音でお楽しみいただけるのではないかと考えました。

対談風景1

SC-C70専用オーディオボードの開発プロセス

湯浅
もともとテクニクスでは、開発中の製品の音質検討を行う試聴室でTAOCのオーディオボードを使用しています。SC-C70も同様にTAOC製オーディオボードに置いて音質を仕上げています。音質的な効果の高さもよくわかっていますので、市販のTAOC製オーディオボードと同様の構造で、SC-C70のサイズに合わせたものが良いと考えました。
ですから、テクニクスとしての要望は「ハニカム鋳鉄を使ったオーディオボード」でした。これをSC-C70にマッチしたサイズや厚さにするのが一番良いと考えました。


重鉄粉入りのハニカム鋳鉄は、800~2kHzの不要な振動を吸収し、特に耳の感度の高い1~2kHzの音のにじみが少ない効果があります。これによって、2kHz以上の音の倍音成分がよりクリアで聴きやすくなります。

対談風景2

廣瀬
音質的な効果についてもご理解いただいていましたので、SC-C70専用オーディオボードの開発はスムーズでした。ハニカム鋳鉄を使った構造で、SC-C70に適したサイズと厚みを検討しました。リビングなどでも使うものですから、音質優先の大きく重くだけではなく、使いやすさにも配慮して決めています。

湯浅
塗装色はリビングスペースで使って調和しやすい色として白としました。

対談風景3
SC-C50 SC-C70

TAOCがこだわる「整振」

廣瀬
TAOCでは、アイシン高丘の持つ鋳造技術を活かし、鋳鉄を使った数々のアクセサリーを生産・販売しています。鋳鉄の良さは密度(比重)が高く、硬度が高く、しかも音の減衰性に優れていることです。鉄の棒と鋳鉄を叩いてみると、鉄は「キーン」とカン高い音で響きも残りますが、鋳鉄は「コンコン」と低い音で響きも短いです。

音の減衰性に優れている鋳鉄


オーディオボードは設置した機器の振動をしっかりと受け止める必要がありますが、このときに不要な振動をしっかりと吸収することが重要です。不要な音色のクセが少ないことも大事です。しかし、密度や硬度が低いために振動を吸収しすぎてしまうのもよくありません。肝心な音楽自体の響きも吸収してしまい、音に潤いがなくなってしまうのです。弊社では、鋳鉄でもカーボンの混入率などが異なるグラデーション鋳鉄、ハイカーボン鋳鉄、アドバンストハイカーボン鋳鉄といった種類のインシュレーターを販売しており、それぞれに用途や音質の好みによって使い分けられます。このように、適切に振動を制御して美しい音にチューニングすることが、TAOCの考える「整振」です。

湯浅
TAOCの製品はSC-C70、C50専用オーディオボードのほかにも、パナソニックの高級BDプレーヤーのDP-UB9000(JAPAN LIMITED)でもハイカーボン鋳鉄のインシュレーターが採用されています。

対談風景4

SC-C70をオーディオボードに設置して試聴

SC-C70

SC-C70の音が専用オーディオボードの有無でどれだけ変化するのかを試聴して聴き比べてみよう。まずはオーディオボード無し。SC-C70はしっかりとした強度のある木製のオーディオラックに設置している。一般的にはこれだけでも十分と言える設置だ。
 音を聴いてみると、ボーカルは定位も良好で声の厚みもしっかりと伝わる。しっとりとした声の質感や色気もよく出ている。伴奏はゆったりと背後に広がっている。
 続いて、SC-C70の下に専用オーディオボードを置いて設置。同じ曲を聴いてみた。すると、中央に浮かぶボーカルの定位がはっきりとよくなったことがわかる。音像がシャープになり、ぐっと実体感を増した再現になる。背後の伴奏も楽器の音の粒立ちがよくなり、奥行きのある立体的な音場になる。また、ベースやドラムといった低音がよく伸び、リズムが明瞭で力強い再現となる。オーディオボードでこんなにも音が変わってしまうのかと驚いてしまうはずだ。

SC-C50をオーディオボードに設置して試聴

SC-C50

続いては、SC-C50で専用オーディオボードの有無による比較試聴をしてみた。まずはオーディオボードなしで、木製のオーディオラックに直接設置。
 定位感は良好で、コンパクトな一体型ながら音の広がりも良好。音場がフワっと柔らかく広がる印象で気持ち良く音楽を楽しめる。ベースやドラムはややゆったりとした感触になるが、低音の力感などはよく出ている。
 これを専用オーディオボードの上に設置すると、全体にフォーカスが合ったような明瞭度の高い再現に変化する。フワっとした広がりの豊かな音場はそのままで、ボーカルがぐっと前に出て、ニュアンス豊かな再現と相まってより実体感豊かな再現だ。やや膨らみ気味だった低音も、音の立ち上がりが素早くなり、ベースの弦が振るえるような感触まできめ細かく再現できるようになった。
 ボディに内蔵したスピーカーユニットの振動がボディ全体を震わせ、音を不明瞭にしていたことがよくわかる。ボディの振動を専用オーディオボードがしっかりと吸収し、クリアでしかも引き締まった音に変えたのだとわかる。SC-C50の曲面で構成された形状に合わせ、厚みもぐっと薄くなったモダンな仕上がりだが、音の改善度はかなりのものだ。

SC-C50専用オーディオボードの開発プロセス

湯浅
SC-C50はよりコンパクトな一体型で、あまり厚みのあるオーディオボードにしてしまうと、大げさな印象になってしまいます。そこでオーディオボードを薄くすることがひとつの目標でした。

廣瀬
ボードを薄くするというのは苦労しましたね。オーディオボードとして必要な強度を確保することが難しくなりますから。そのため、パーチクルボードやハードボード、MDFといったいくつかの種類の木材を試すなど、何回も試作を行いました。そして、脚部を設置する部分にグラデーション鋳鉄製のインシュレーターを配置し、ボディの振動を吸収する構造です。

対談風景5


グラデーション鋳鉄の振動吸収効果は高いですが、限界もあります。そこで、ボードとインシュレーターの間にポロン材のシートを挟んでいます。このポロン材は最初潰れやすいのですが、その後は硬くなる性質を持っていて、初期の強い振動をよく吸収しつつ、その後の振動はあまり吸収しません。これとグラデーション鋳鉄のインシュレーターとの組み合わせで振動を制御しています。

廣瀬
優れた特性の素材を使えば音が良いとは限らないのがオーディオの面白いところです。素材の特性を理解して、適切に選択することで、本来の良さを引き出せます。素材を検討し、試作を繰り返すことで、聴いて楽しい音に仕上げることができました。

対談風景6 オーディオボード

湯浅
SC-C70は発売以来3回のキャンペーンを行っており、SC-C50のキャンペーンは現在実施中です。キャンペーンでは、お客様がご購入した後でキャンペーンに申し込んでいただき、後日専用オーディオボードを発送します。一度オーディオボード無しで聴いていただき、その後にオーディオボードを使ってお聴きいただくので、その良さがよくわかります。置き方やアクセサリーの有無で音質が大きく変わる、そんなオーディオの面白さをご体験いただけると思います。

インタビュー取材日:2018年12月6日

SC-C70
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