アリス=紗良・オット  × 小川理子 SPECIAL TALK

アリス=紗良・オット
アリス=紗良・オット
ドイツ人と日本人の両親をもつ ピアニスト、アリス=紗良・オットは、5年足らずのうちに世界各地の主要なコンサート・ホールで演奏し、批評家の絶賛を博すとともに、今日最も刺激的な音楽家の一人として確固たる地位を築いた。世界有数のオーケストラや指揮者と定期的に共演を重ねている。2008年よりドイツ・グラモフォンと専属契約を結ぶ。2015年3月に発売されたオーラヴル・アルナルズとのコラボレーション・アルバム「ショパン・プロジェクト」はイギリス、フランス、イタリアなど25カ国のiTunesクラシック・チャートで1位にランクインした。2010年10月には、エコー・クラシック賞の「ヤング・アーティスト・オブ・ザ・イヤー」賞を受賞した。2016年9月にグリーグの抒情小曲集を収録したアルバム『ワンダーランド』を発売。

音楽を始めたきっかけやターニング・ポイント

アリス 3歳の時に初めて両親にピアノのコンサートに連れて行ってもらったことが音楽を始めるきっかけになりました。ドイツでは年齢の制限なく赤ちゃんでもコンサートが聞けるんです。お客さんを2時間も夢中にさせてしまう音楽の力にすごく惹かれて、コンサートの後に「私もピアニストになりたい」と母に言いました。その時は承諾を得られなかったのですが、その1年後にようやくOKをもらいました。最初の2年はバッハを弾いていたのですが、バッハの一声一声を重ねていく感じがすごく好きで、時間を忘れるくらい夢中になりました。両親の国籍が異なっていたので、自分の国籍に悩む時期があったんですけど、音楽家として他の国に行くと誰も国籍を聞いてこないし、それがすごく心地よかったんです。

小川 3歳の時にピアニストになりたいって思うのがすごい。

アリス たぶんそのコンサートがたまたまピアノのコンサートだったからだと思うんです。それがもし、チェロだったらチェリスト、バイオリンだったらバイオリニストになりたいって言っていたかもしれないですね。小川さんはどんなきっかけで音楽を始めたんですか?

小川 私も3歳の時に音楽を始めたの。隣の家の友達がピアノを始めたのを見て「私もやりたい」って言ったら、母が家庭教師の先生をつけてくれた。その後、家庭教師の先生に「この子は音感がとても良いから音楽教室に通わせた方がいいですよ」って言われたので、音楽教室に行くようになったの。聴音とかソルフェージュ、実技では、ハノン・ツェルニー・モーツァルト・ベートーベン・ショパン・リストとかいろいろやっていたんだけれども、やっぱり私も一番おもしろかったのがバッハだった。

アリス そうですよね。

小川 ただ私の場合は練習があまり好きじゃなかったみたいで、テレビで聞いたアニメのテーマソングやドラマの音楽とかを聞いて、「これいいな」って思ったら耳で覚えて弾いたりしていました。

アリス アレンジもしているということですよね。それは何歳ごろですか?

小川 小学校1年生くらいかな。だから私は最初からクラシックよりもジャズ向きの人間だった。

アリス 楽譜を読むよりも耳で聞いて弾いていたんですね。私は楽譜に書いてあるものしか弾けないんですよ。

小川 父親が家でいろんなジャンルのジャズを聴いていて、私はジャンルとかまったく意識してなかったんだけれども、ただおもしろいなと思って、ビッグバンド風に自分でアレンジしたりして。

小川理子・アリス=紗良・オット

仕事のモチベーション

アリス 音楽を通して舞台の上でみなさんと会話しているのがすごく楽しくて、その時に伝わってくる気持ちとか感情とかにすごく励まされています。先日の日本でのツアーの際、ちょっとした人生の別れがあってすごく落ち込んでいた時があったんですが、東京の公演でアンコールを弾く時、会場に集まってくれたお客様からすごく温かい気持ちを感じたんです。「今はすごくつらい時期だけれども、こうやってお客様やオーケストラのメンバーに恵まれているな」と思ったら、涙が溢れてきました。すごく幸せだなと思って。音楽や日常生活を支えてくださる方たちと気持ちをシェアするとき、自分自身が生きていると1番感じます。音楽は世界中のみんなを結びつける力があって、私もそれに関わることができていると感じることもモチベーションの1つになっています。

小川 私は、音楽を再生する機器を開発・生産・販売している責任とその良い音楽と感動をお届けしたいという使命感が自分のモチベーションになっています。実は私は音に関する仕事がしたくて会社に入り、15年間音響分野に携わりましたが、その後違う部署で音の仕事から離れた時期がありました。また戻ったことにご縁を感じていて、大変なんだけれども、その分私が絶対にやらなきゃいけない使命感みたいなものがあります。

小川理子・アリス=紗良・オット

これから50年後100年後、それ以降の音楽はどうなっていくのか。どうなっていたいか。

小川 50年後はロボットが歌を歌ったり演奏したりしているのが当たり前になっていると思う。機械にやらせればピアノを100本の指でも弾けるわけで、そういう人間にはできないことが音楽として作り上げられる。でも、音楽を聞いたときに人間が気持ちいいと思えるかどうかが大事で、それはその時代に生きる人じゃないとわからないという点からも、いろんな意味でどんどん変わっていくと思います。ただ、ものすごくオリジナルなパワーがあったりするバッハのように、不変・不滅なものというのはその時代ごとに産まれて継承されていくのではないかと思う。

アリス 50年後とは言わないけれども、私が夢見るオーケストラはみんなレザーパンツを着るような、もう少しリラックスした感じのコンサートにすることです。昔はジャズバーでもクラシックのコンサートでも、みんなが会話をしたりお酒を飲んだり食事をしながら音楽を楽しんでいた。ところが、なぜかここ100年でクラシックのコンサート会場でいろいろなルールが生まれてきたように思います。クラシックのコンサートはお洒落をして、合奏と合奏の間で拍手や咳はしてはいけないというように、すごく固いイメージになってしまっています。リストとかショパンの時代にはその時に流行していたものを着ていましたし、固いルールによって私の世代がクラシックのコンサートに気軽に来られなくなっているのではないかと思います。音楽自体はすごく人に感動を与える力があるので、それをうまく若いジェネレーションに伝えていくことが私たち世代の音楽家の大きな役割だと思います。

小川理子・アリス=紗良・オット

Rediscover Musicについて

小川 100年かけて完成度の高い成熟した文化ができたアナログ時代のオーディオのように、もちろんそのままではないけれど、「今、もう一度音楽の真髄というものを取り戻したい」という意味を込めてTechnicsがRediscover Musicを手がけています。60年代70年代はアナログ時代の全盛期、80年代はデジタル時代になって90年代はネットワークもでてきて、どんどん便利になってきた。便利な世界はそれはそれでメリットもあるんだけれど、やっぱり本当に良いものって便利じゃないこともあるのよね。面倒臭かったりとか、すごく時間がかかったりとかするんだけれど、本物を知るという体験をするということが次世代の人には大切だと思う。デジタルな時代だから今の大人でもそういうことをひょっとしたら忘れるかもしれないから、それを人間として取り戻したいという思いはがあります。

アリス 私はこのRediscover Musicというメッセージが音楽に合っていると思うんです。私はもちろん現代音楽も聞きますけど、やっぱり音楽っていうのは時代を超える力があるし、それを次の時代に届けるのが音楽のためだと思います。もちろん当時の背景を知るのはすごく大事でしょうが、作曲家の思いっていうのは99%わからないと思うんです。そして最後の1%が想像力であって、時代に合わせて形を変えていくのが大事なんだと思うんです。だから特にこのメッセージは私たち音楽をやっている人たちがやらなくちゃいけない。

小川 「伝統は革新の中に存在する」っていう日本の伝統工芸の人たちが常に語っている言葉があって、伝統になるということはその時その時に革新が起こっているということだと思うのね。技術の進歩も同じ考え方だと思う。

アリス 昔パリで起きた芸術の世界での大きな革命の際、「春の祭典」の初演で観客がブーイングをして、腐った果物とかをアーティストに投げつけたらしいんです。でも、そういうことがあったからこそ今の音楽・芸術というのがあって。日本でも思うんですけどみんな名曲にはそれぞれ意見を言えるのに、それが現代音楽になってしまうとその意見がなくなってしまうんですよね。何を言って良いかわからなくて怖くなってしまうと思うんですけど、それでも2回聞くと始まりがどこにあるか終わりがどこにあるか分かるし、3回聞くと大体理解してきてここで多分こうなる、とか…。

小川 そうそう、面白いなと思うのよね、そういうのって。理解をしようとするよりもなにか面白いなと思ったり、なにかを感じたり。絵でもそうだと思うんだけど、「わからないなあ…」って思ってもあとで「なるほど!」って思ったり、「この人はこういうことをやりたかったんだ!」って思うことになにか面白みを感じたりだとか、「なにか新しいことをしよう」っていうそういうエネルギーの表れだと思う。そうやっていかないと次に進めないというか、次に進む意義が薄れるというか。私たちはなんのためにこの時代に生きているのかっていうのを大切にしたいですね。同じことをやっていても、コピーやっていても仕方がないので。

小川理子・アリス=紗良・オット

最後にお互いへメッセージを

小川 アリスは無限の可能性を秘めているので、これからもずっと何をやってくれるか見るのを楽しみにしています。

アリス このコラボレーションがきっかけで小川さんにもお会いできたし、いろいろな方々と関わることができてすごく幸せを感じています。こうやっていろいろな素敵な話を聞かせていただける時間も楽しいです。

【OTTAVA・T700について】

アリス 10年ぶりに2ヶ月間のバケーションを取れたので、家にいるときはずっとOTTAVAを聞いています。270度のアングルでどこにいても同じように聞こえるのがすごく嬉しくて、ずっと音楽をかけているんです。また、先日新しくリリースされたアルバムを録音した時にT700を持って行ってスタジオのみんなに自慢しました。長時間かけていても全然重さも感じないんです。

小川 アリスは華奢な細い体に、あのヘッドホンで大丈夫?

アリス 今まで使ったヘッドホンの中でも一番快適です。持ってみると重いかなと思うんですが、聴いているとまったく重さを感じないんです。レコーディング・スタジオでエンジニアの方達にもすごく羨ましがられました。うちにあるOTTAVAもみんなに羨ましいと言われますよ。

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