fox capture plan 岸本亮さん・井上司さん「いい音で聴いて、初めて聴こえる音ってありますよね。」

PROFILE
現代版ジャズロックをコンセプトに、それぞれ違う個性を持つバンドで活動する3人が集まり2011年結成。ジャズピアノトリオ編成を軸にポストロック、ドラムンベース、ダブステップ等の要素を取り込んだ新感覚な楽曲が特徴。2012年10月、タワーレコード限定ミニアルバム「FLEXIBLE」でデビュー。2013年12月にリリースした2ndアルバム「BRIDGE」が、JAZZ JAPAN AWARD2013アルバムオブザイヤーニュースター部門、CDショップ大賞2014部門賞ジャズ賞の2冠を獲得。ドラマ(TBS系「ヤメゴク〜やくざやめて頂きます〜」)の劇中音楽、CM(ASICS A77)、東京モーターショー(トヨタ プリウス)等多方面への楽曲提供も行う。翌2015年はアルバム3枚をリリースし、再度JAZZ JAPAN AWARD2015&CDショップ大賞部門賞ジャズ賞を獲得。その後2016年はボーカリストKeishi Tanakaとのコラボ作品「透明色のクルージング」や、数々の海外ツアー、FUJI ROCK FESTIVAL'16、東京JAZZ2016メインホール出演等精力的に活動中。2017年1月、5thフルアルバム「FRAGILE」リリース&再度ドラマ(TBS系「カルテット」)の全編劇中音楽を担当予定。
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テクニクスでは、ダイレクトドライブターンテーブルシステム「SL-1200G」の購入者にオリジナルレコードをプレゼントするキャンペーンを実施しました(応募終了済)。今回のキャンペーンでプレゼントされるオリジナルレコードには、新たなジャズの波を感じさせる4組の日本人アーティストの楽曲が収録されています。

今回はその中からfox capture plan(フォックス キャプチャー プラン)から岸本亮と井上司の2名を有明にあるショウルームにお招きし、収録曲「Atttack on fox」やお気に入りのレコードについて、さらには2016年のバンドの活動から現在のジャズシーンについてまで、幅広くお話をお伺いしました。

― まず、早速ですが今回の特典レコードに収録されている「Attack on fox」を実際にSL-1200Gで聴いてみましょうか(fox capture plan「Attack on fox」に針を落とす)。

岸本 めっちゃいいですね。今までこの曲を聴いてきた中で、一番音がいいです(笑)。逆に、この環境で聴いてもちゃんとした音が鳴っててよかった(笑)。

― 岸本さんには他にもレコードを何枚か持ってきてもらっているので、それも聴いてみましょう。じゃあ、まずは岸本さんご自身も参加されているというKeishi Tanakaさんの『What's A Trunk?』から。

岸本 バッキングの生っぽさはアナログらしい伝わり方ですけど、でも「デジタルで再生してる」って言われたらそう思えるくらい、クリアでもありますね。一昔前だと、「これはアナログの音だね」って、良くも悪くもすぐわかったけど、今は解像度がすごく上がっていて、音がよくなる装置みたいな感じがします(笑)。

― 続いて、ビョークの『Gling-Glo』。1990年に発表されている「幻のジャズアルバム」と呼ばれる作品ですね。

岸本 ビョークはフォックスでカバーしたりもしてるんですけど、ビョークの中でもルーツを感じる一枚をセレクトしました。家で聴いてたときよりも、高音から低音まで、再現度がすごい。

井上 すぐ目の前でビョークが歌ってるみたいだよね(笑)。

― そして、ミシェル・ルグラン。

岸本 これタイトルがわからないんですけど、母親が好きだったので実家にあって、東京に勝手に持ってきました(笑)。ピアノも作曲もアレンジも全部素晴らしいですね。しかも、ここで聴くとリマスタリングされてるように聴こえます(笑)。

― では最後に、音楽を聴く環境が多様化してきている中にあって、「いい音で聴く喜び」をどのようにお考えか、それぞれ話していただけますでしょうか?

井上 いい音で聴いて、初めて聴こえる音ってありますよね。ずっと聴いてたはずなのに、「あれ、こんな音入ってたんだ?」みたいな、そういうのは面白いなって。

岸本 アナログにはアナログの良さが、デジタルにはデジタルの良さがあって、耳に入ってくる感じが全然違うので、そこはどっちがいい悪いではないですけど、やっぱりアナログの良さは味があるっていうことで、生楽器の音に近いですよね。

井上 ライブを見てるような感じがするもんね。

岸本 最近のデジタルピアノって、僕がライブで使ってるキーボードもそうですけど、ピアノの音の再現度がすごく上がってるんです。ただ、それでも生ピアノを弾いたときの感覚って、やっぱりそれとは全然別ものなんですよね。今日いい環境で聴かせてもらって、「やっぱり違うな」って、同じような感覚になりましたね。

fox capture plan 井上司さん・岸本亮さん

― では次に、fox capture planの2016年の活動を振り返っていただけますか?

岸本 今年は結成5周年だったんですけど、去年の年末に結成からの目標のひとつだったリキッドルームでのワンマンが実現して、「ここからどうしようか?」っていう中で、ビルボードライヴでのツアーというお話をいただいたんです。今までシッティングのワンマンで東名阪を回るっていうのはなかったので、「5周年ワンマンツアー」としてすごくよかったと思います。あと振り返ってみると今年はコラボイヤーで、Keishi Tanakaさん、ディズニーのコンピでの大森靖子さん、あとbohemianvoodooとjizueとはそれぞれスプリットも作りましたしね。

井上 ライブで言うと、夢だったフジロックに出れたり、TOKYO JAZZ FESTIVALでメインステージに出させてもらったり、あとは海外も多かったね。

岸本 シンガポール、中国、フランスとか。シンガポールはPrimitive Art Orchestra、Schroeder-Headz、ADAM atとか、日本の近いシーンにいるみんなと一緒に行けたのもよかったし、ロケーションも素晴らしかったです。

― 2015年は作品を3枚リリースしたわけですが、今年はその成果を持って、より広くに拡張して行ったようなイメージがあります。

岸本 そうかもしれないですね。次のアルバムをまた一月にリリースするんですけど、ホントは今年5周年だから、単独のフルアルバムを出そうっていう話もあったんです。ただ、いろんな方とコラボする機会があったし、慌てて出す必要もないかと思って、少し延ばして一月にして、そのおかげでいろんなアイデアも出たし、結果よかったですね。

― ヴォーカリストとのコラボレーションはバンドにとって新たな挑戦で、Keishi Tanakaさんとは『透明色のクルージング』をリリースしただけではなく、一緒にツアーも回ったわけですが、どんな経験になりましたか?

井上 ツアーファイナルは、「フォックスなんだけど、でも違う」みたいな、「ゲストヴォーカルとのツアー」というよりも、Keishiくんも入れた新しいバンドみたいな感覚になってて、すごく貴重なツアーになったなって。

岸本 カワイくんがエレベを弾いたり、キーボードで違う音を出したりって、これまでのフォックスではやってこなかったし、ギターのサポートでQUATTROの潮田くんもいたから、ホントに新しいバンドでしたね。先日の『Color & Monochrome』のリリースパーティーでもサプライズでKeishiくんに出てもらったり、僕はあのツアーきっかけで彼のアルバムにも参加して、「透明色のクルージング」を彼のバンドメンバーと演奏すると、もちろんフォックスでやるのとは全然違うので、新たな発見もありました。

― 『ROCK IN DISNEY ~Season Of The Beat』での、大森靖子さんとのコラボはさらに驚かされました。

岸本 まずディズニーのコンピの話をいただいて、いろんなヴォーカルの方を提案していただいた中で、「大森さんどうですか?」っていう話になって、ぜひお願いしようということになりました。カバーした「不思議の国のアリス」はもともとジャズの世界では定番だし、イメージ的にも「不思議の国のアリス」と大森さんって合いそうだと思って(笑)。結果的にも、バッチリでしたね。

― レコーディングはどんな風に進んだのでしょうか?

岸本 先にオケを録って、3人揃って歌録りに立ち会ったんですけど、大森さんからもいろいろ提案していただいて、冒頭がピアノとヴォーカルだけで始まるんですけど、毎回違ういろんなテイクを録って、その中から相談して決めて行きました。とても気さくな方で、一緒に写真も撮っていただいたり(笑)。

― では、ここからは2016年のジャズシーン全体の動きについてお話していただければと思います。

岸本 今年はフジロックにカマシ・ワシントンが出たり、サマソニにハイエイタス・カイヨーテが出たり、海外のジャズ系のアーティストが日本の大きなフェスに結構出てましたよね。

井上 なので、普段は全然ジャズを聴かないような人でも、今名前が出たようなアーティストのことは知ってたり、シーンのことが知られてきたなって。それによって、アーティスト側もジャンル関係なく、前以上に気軽に交わるようになったっていうのもあると思います。

岸本 あと地方とかに行くと、入場無料の「~ジャズ・フェスティヴァル」みたいなのをよく目にするんですよね。やっぱり、ロックフェスよりも年齢関係なく、気軽に足を運べる場なんじゃないかと思って、内容はオーセンティックだと思うんですけど、ジャズを必要としてる人は増えてるんじゃないかと思います。

fox capture plan 井上司さん

― 海外アーティストの来日公演は何か観に行きましたか?

井上 僕は年明けにあったマーク・ジュリアナのジャズカルテットが印象的でした。

岸本 ブルーノートで観たジャガ・ジャジストは素晴らしかったです。あとはTOKYO JAZZ ESTIVALでケニー・バロン、グレッチェン・パーラト、ミシェル・カミロ、上原ひろみさんと同じステージに立たせてもらえて、すごく刺激になりました。

― 国内の動きに話を移すと、みなさんはMONDO GROSSOをはじめとした90年代のクラブジャズを聴いて育った世代と言えるかと思うのですが、当時のシーンと2010年代のジャズシーンとの違いをどのように捉えていますか?

岸本 おっしゃる通り、fox captu planもJABBERLOOPも、あるいはbohemianvoodooやTRI4THといった近いバンドも、みんなMONDO GROSSOやSLEEP WALKERの流れのクラブジャズからすごく影響を受けてるんですけど、あのラインは先人たちが完成させた音楽なので、僕たちはそれと同じことをやってもオッケーとは思えなかった世代というか、新しい風を入れて行きたいと思ったんですよね。なので、fox capture planとしてはポストロックとか、打ち込みのミニマルなループの要素を取り入れたりして。

― 海外ではジャズとヒップホップが融合して行ったように、国内でも新たなミックスによってジャズを推し進める動きが起こっていると言えますよね。

岸本 あと僕らの場合はジャズ以外の音楽リスナーがジャズに入り込むためのきっかけを作るっていう意識があって、00年代とはそこが違うのかなって。00年代はジャズとクラブミュージックが密接で、それ以外はそこまで関わってなかったけど、2010年代はもっと間口が広がってて、だからこそ、Keishiくんや大森さんともコラボができるっていう。

― YouTubeの登場以降、音楽を雑食に聴くのが普通のことになって、その中でジャズの持つセッション性や、プレイヤビリティの高さが見直されたとも言えるかと。

岸本 スキルがあった上で、ジャズ以外の音楽も聴いて、より自分たちの音楽を広げていきたい気持ちもあるし、例えば、Keishiくんや大森さんのファンで、普段はジャズを聴かない人が、僕たちをきっかけにジャズに興味を持ってくれたらなとも思います。「なんかジャズっぽくてかっこいい」くらいで全然いいんです。それがジャズを聴くきっかけになれば、そんな嬉しいことはないですね。

fox capture plan 岸本亮さん

― そして、途中でも話が出ましたが、1月には5枚目のフルアルバム『FRAGILE』がリリースされます。どんな作品に仕上がっていますか?

岸本 「これホントにfox capture plan?」って、疑うような内容になってるかもしれないですね。「岸本のピアノっぽいけど、フォックスなのか?」みたいな(笑)

井上 いい意味で進化してると思います。フォックスっぽさはありつつ、いろいろ冒険もしてるので。

岸本 スタッフ連中からも、「手堅く今まで通りやるんじゃなくて、何か発信しようとしてるね」って言ってもらえて、自分たちもそのつもりだったので、手応えはありますね。

― 発売を楽しみにしています。では、ここからは今回のキャンペーンについて話をしていこうと思うのですが、まずお二人は普段からレコードと接する機会は多いですか?

井上 うちのレーベルのボスの谷口さん(※谷口慶介 Playwrightレーベルディレクター)がDJなので、いろんな音楽の話を聞くことは多いですね。あと個人的には、いろんな音楽を聴き始めたときに、ライブハウスよりも先にクラブに行くようになって、そこで友達のDJを見るっていう青春時代だったんです。その頃の記憶は鮮明に残ってて、レコードってかっこいいなっていうのがずっとあります。

岸本 うちは両親が音楽好きなので、実家にレコードがいっぱいあって、ジョン・コルトレーンの同じアルバムが2枚あるなって思ったら、2人とも同じタイミングで買ってたみたいな話を聞いたことがあります。あと自分がJABBERLOOPをやり始めた頃はクラブジャズの全盛期で、バンドよりもDJとしてネームバリューのある人が多かったから、そういう人に憧れて、自分でもDJをしたり。結局CDJだったんですけど(笑)。

fox capture plan 岸本亮さん・井上司さん

― 普段はどんな環境で音楽を聴いていますか?

岸本 レコードプレイヤーは一時期に比べるとそんなに活用してないんですけど、真空管のアンプとタンノイのスピーカーを使っていて、作業用にパソコンで聴くのとはもちろん全然違いますね。音のあったかみがあって、すごくリラックスして聴けます。

― プレイヤーを買うとレコードがついてくるという企画に関してはどんな印象を持たれましたか?

岸本 素晴らしいと思いましたし、それに参加できて光栄です。オーディオメーカーの人が「こういう音楽を広めたい」って考えるのって、面白いですよね。原点回帰というか、人間味のあるやり方というか、文字通りアナログなやり方で(笑)、そこがいいなって。

― レコードに収録されている「Attack on fox」はバンドにとってどんな一曲ですか?

岸本 TOKYO JAZZ FESTIVALもそうですけど、主要なライブでは必ずやって、最後に一発かますって感じですね(笑)。タイトルに「fox」って入ってるくらいだし、バンドのテーマソング的な感じもあって、すごく重要なレパートリーです。

井上 フォックスの攻撃性、切れ味、メロディーの感じ、全部が合わさっていて、ホントに「ザ・フォックス」っていう感じの一曲だと思います。

fox capture plan 岸本亮さん・井上司さん
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